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切り取られた青空-いとー31

香織は結婚式は要らないと言った。会社の引継ぎの段取りさえ済めば、すぐに私の許に来て生活する、それだけで良いと…
「今から結婚式の段取りしたって、いくら早くても1ヶ月とか先の話になっちゃうわけでしょ。遅くなるなればなるほどお腹は目立ってくるだろうし。友達の話を聞いてると普通でも大変だって言うのに、その上子供のこと心配しながら結婚式なんて、嫌だもの。」
このとき、季節は10月の半ばを過ぎていて、急いで結婚式をやるとなると、年末の忙しい最中になるし、年を改めてということになると香織の言うようにかなり週数が進んでしまうことになるのだ。

「子供産んでからスリムになってから、ドレス着て写真撮りに行けばそれでいいの。なんせ、そばに立派なトレーナーも付いてることだし。」
香織は私を見てそう言いながら笑った。彼女は165cmで、当時68kgくらいあり、彼女の目標である58kgからはまだ10kgくらい多かった。
「言い出したら聞かないからな、お前は。」
と彼女のお父さんが言った。私も彼女に引っ張られてここまでこれたような気がする。

夕方、彼女の実家を出るときに、詩織ちゃんが
「おねえ、子供のことなんか聞いてなかったわよ。いつわかったのよ。」
と言った。香織は詩織ちゃんに妊娠したかもしれないことは言ってなかったのか…
「はっきりと確認したのはつい何日か前だけど…シオ、何でパパにエイプリルさんのこと話したの?それを聞いたとき、子どものこと話さなくて良かったって思ったわ。」
「ごめん、ここんとこおねえがどんどんきれいになるって話になってさ、つい言っちゃったのよね『おねえには王子様がいるから』って。それだけよ。悪かった?」
香織に言われた詩織ちゃんは、頭に手を軽く当てながら、頭をぺこりと下げてそう言った。
「ううん、おかげで殴られずに済んだし。」
「僕は殴られるより任されるほうが却って怖いと思ったよ。責任の大きさに身が引き締まる思いがした。」
「ふーん…」
私がそう言うと、詩織ちゃんはあごに手を当てて納得した表情になった。
「何よ、その言い方。」
「おねえが綿貫さんに惚れた理由がわかったような気がするわ。なんかパパに似てるもの。おねえパパっ子だもんね。」
女性は自分の父親に似た男を結局選ぶと言う。彼女の場合も、そういうことなのだろうか。
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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