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赤ちゃんパニック 19

「それではそろそろ始めましょうか」
注文した飲み物がやってきて、店員さんが表側の方に消えていったのを見計らってセルディオさんがそう言った。
 それからセルディオさんは、中司さんを抱いている谷山先輩の前にさっと両手を差し出して、彼を抱こうとした。案の定、中司さんは谷山先輩の胸にくしゃっと顔を歪めてしがみつく。
 そして、中司さんが再度その『唯一安心できる場所から引き離す者』をのぞき込んだその時、セルディオさんがパチンと指を鳴らした。そのとたん、中司さんは泣く寸前の顔のままコトンと首を谷山先輩の胸に戻した。それを見て、その場のセルディオさんを除く三人から安堵のため息がもれる。セルディオさんは、
「まったく、冷や冷やさせんじゃねぇよ」
と文句を言う先輩に、
「対人魔法は相手がこっちを見てくれないとかかりにくいんですよ」
と笑顔で言いながら、紙袋から取り出した中司さんのドレスシャツとボトムをまるで人が倒れているかのように床に順番に並べた。ご丁寧にボトムには下着もセットしてベルトまで通した。そして、谷山先輩に、
「薫様、ご足労ですがこの方のお召し物を全部とってくださいませんか。私がやるとその小さな方のどこかを痛めてしまいそうです」
と言ったので、谷山先輩が中司さんを素っ裸にしてセルディオさんに渡す。セルディオさんは、中司さんをそのドレスシャツの部分に寝かせ、上からきっちりボタンをしていく。
 そして、ドレスシャツの裾をボトムの中に入れ込むと、僕に向かって、
「さぁ、準備はできました。ちゃんと、対逆呪文は頭に入ってますね。」
と言った。僕は黙って頷いた。何でかは分からないけど、オラトリオの魔法の呪文は一度聞いたら忘れない。下手な外国語より確実に身に染み込む気がする。
 僕は、ふっと大きく息を吐ききると、両手を開いて前に出し、
<汝その若返りし身体を元の齢に戻せ Grow!!>
と、高らかに対逆魔法を唱えた。
 すると、少しずつぺちゃんこだったドレスシャツの下の部分に膨らみ始めた同時に、少しずつ袖のところも膨らんで行く。Growだから高速成長の魔法なのだろう。
 真っ裸だったらものすごい勢いで成長している中司さんを見られたんだろうなと残念に思いつつ、それだと谷山先輩にはものすごく刺激的な絵面になってしまうからダメだなと納得する。それに、元に戻った中司さんに服を着せるのも一苦労だし、ビニル製の人形に空気を入れているみたいで、これはこれで面白いかも。
 だけど、『かわいい彰教ちゃん』がおっさんになっていくのはショックだったみたいで、谷山先輩はただでさえ悪い顔色をなお悪くして席に倒れ込む。まぁ、僕もその前にに大魔法のショックで席にへたり込んであわてて乾燥ガザの実を口に入れて見てたんだけどね。
 ものの3分ほどで元のの29歳に戻った中司さんを、セルディオさんが魔法で身体を浮かせて、僕らと通路を挟んで反対側の座席に座らせて、セッティングが完了した。
 それから、中司さんを座らせた席に先輩が頼んだ『満福珈琲』を置き、先輩が表の方に追加注文に行く。

 さぁ、これから第2場のスタートだ。

 












 





 
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