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赤ちゃんパニック 15

「おい、こら起きろ。それにしてもこの喧噪でよく寝てられんな」
 僕は先輩に新聞を丸めた筒で殴られて起こされた。あたりはもう既に真っ暗で、中司ベビーがミルクだかおしめだか解らない催促で顔を真っ赤にして泣いていた。夢の中でミシェルが(オラトリオの。社長じゃないよ)泣きながらセルディオさんを探していたのは、中司さんがこっちで泣いていたからなのかな。
 結局、ミシェルはテオブロ改めデニス・ガーランドさん(改心したようなんで、ちゃんとさんづけしとこぉっと)になだめられて、彼の物語を聞きながら寝ちゃったんだけどね。
「それだけ疲れてるんですよ」
と僕が返すと、
「にしても自業自得だ、お前」
と、先輩にもう一度さっきの新聞紙で殴られた。パコーンと妙に小気味良い音がリビングに響く。そこで中司さんがピタッと泣き止んだ。その音で泣き止んだかと和室の方を見ると、件の中司さんは用足し(後から本人から聞いた)から戻ってきた谷山先輩に吸いつくようにしがみついている。そんな中司さんを優しく見下ろしながら、谷山先輩は足でリズムを取りながらゆっくりと彼を揺すっていた。その姿を見て先輩が、
「おい、さっきからなに独占してやがんだ。薫はてめぇのもんじゃねぇ。ちっとは離れろ!!」
中司さんを引き剥がそうとする。
「鮎川、泣くから止めなさいって。それにしても、赤ちゃん相手に何ムキになってんのよ」
谷山先輩はそれを笑いながらやんわりと制する。
「こいつ、ホントはガキじゃねぇ! 俺より年上なんだぞ。おっさんにまとわりつかれてると思うと、我慢できるか」
そしたら、先輩はそう言って歯をむき出した。ぷぷっ、先輩ヤキモチ焼いてるんだ。
「でも、今は赤ちゃんよ」
それを谷山先輩は、余裕で受け流している。だけど……
「おかしいな、中司さんはものすごく女嫌いだったはずでしょ。僕がお茶を運んだら、
『契約締結に女なんかよこすな』
って、そりゃすごい剣幕でしたもん。僕が男だって分かっても、
『そんな紛らわしい顔をしてるな』
って怒るんですから。だから、僕つい言い返したちゃったんです。
『あなただってお母さんから生まれてきたんでしょ、何も木の股から生まれてきた訳じゃないんですから。そんなのあなたのお母さんに失礼ですよ』
って。
そしたら、中司さん、
『俺には母親なんていない! 俺にアレの話なんかするな!!』
って僕につかみかかろうとするんですもん。
で……こんな人、もう一度赤ちゃんからやり直せば良いんだと思ってね、つい……」
「で、こいつをガキに変えちまった訳か。お前チビだとか女顔だとか、そういうことにナーバスになり過ぎなんだよ」
僕は、首を傾げながら中司さんを赤ちゃんに変えてしまった経緯を話す。それを聞いた先輩はそう言って眉間を抑えた。その言いぐさに、
「そんなの背が高くて男らしい先輩に言われたくありません」
「所詮、恵まれた鮎川様には私共の気持ちなど解らないのですよ」
僕たちはほぼ同時に同じような意味のことを返した。それを見て谷山先輩が、中司さんを落とさないように、畳に座り込んで大笑いしている。

……先輩たちには絶対に解って貰えっこないだろうけど、これは僕たちにとってはかなり重要なもんだいなんだよね(ぶつぶつ)

「Reverseの呪文は、その方の体の時間を逆回しするもの。当然頭も体ですから赤子のこの方の記憶も乳児期のものですけど、今のこの方は女性嫌いどころか、片時も母代わりの薫様から離れるのを嫌がっているご様子。一体どうして、大人の彼は女性を毛嫌いするのでしょう」
 谷山先輩の笑いが治まったのを見計らって、僕が一番疑問に思っていたことをセルディオさんが先に口にしてくれた。
「それか……それはこいつが5歳の時に母親に捨てられたからだ」
で、それに対して出てきた先輩の答えに、僕とセルディオさんは驚いて互いの顔を見合わせた。




 





 
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