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赤ちゃんパニック 6

「み、宮本君、て、手が……!!」
「私はビクトールです。美久ではありません。お間違いなさいませんように」
薫は蒼白になってビクトールを指さす。それに対してビクトールは笑顔でそう訂正した。
「一体、何者?」
パラレルワールドのことは理解しないまでも、薫にもこいつが宮本じゃないことだけは解ったようで、薫はぶるぶる震えながらそう言った。
「ビクトール・スルタン・セルディオと言えば、こいつの世界オラトリオでは『稀代の魔術師』と呼ばれるちょっとした有名人だ」
で、奴がどう説明しようかという顔をした隙に、俺が先に薫にそう答える。
「別に有名ではありませんよ。それに稀代の魔術師というあざ名は、元々私の祖父につけられたもの。私が少しばかり祖父の能力を受け継いでいることで同じように呼ばれるようになったのですが、私などまだまだ祖父の足下にも及びません」
ビクトールは照れながらそう付け加えた。
「へぇ、じいちゃんの通り名か」
確かに、こいつの魔力には目をみはるものがあるけど、若干23歳の男が負うには少々荷が重すぎる通り名ではある。だが、じいさんの名を引き継いだのなら、それも納得だ。
「ま、魔術師」
それに対して、薫がまだ納得いかない様子で問い返す。
「そ、魔術師、手品師じゃねぇ。だから種なしなんだな、これが」
俺はそう言ってにっと笑った。
「種? 何ですかそれは」
ビクトールもそう言いながら身体をホワイトボードにぐいっとめり込ませる。薫もさすがにそれを見て俺たちが担いでいるのではないと思ったようで、ため息をついてこめかみを押さえた。
「魔法で、クライアントを赤ちゃんに……それって大事件じゃない」
「だろ、だから協力してもらいたいんだよ」
「うう、解った。解りたくないけど、解った」
そして、薫はつぶやくようにそう了承した。

「そうと決まれば、ビクトール、お前も手伝え」
「どうしてですか、もう私がやることはないでしょう?」
俺の言葉に、ビクトールはホワイトボードにつっこんだ身体を引き抜きながらそう答えた。つっこんだ身体が引き戻される様に、薫から『ひっ』というひきつった声が漏れる。どう見てもやっぱこのシチュエーションはホラーだよな。
「とにかく、こいつが帰ったってことにだけはしないとな。他社のトップクラスがウチの応接室で消えたなんてことになりゃ一大問題だ、それだけはなんとしてでも回避したい」
俺は、抱いている中司(ガキ)を見下ろしながらそう言った。
「幸い? この世界の連中に魔法使いはいないし、お前なら簡単に魔法で、自分をこいつだと思わせることができるんだろ」
なんせあのポンコツと張りぼてをすげ替えた位だしな、と俺が言うと、
「ええまぁ、やれないことはありませんが」
とビクトールは薄笑いを浮かべながらそう答えた。どっちかってぇとやる気満々なんじゃねぇか、お前。
「よっしゃ、じゃぁ俺たちは契約締結後外で会食するってことにして会社を出る」
その言葉にビクトールが無言で頷く。
「それから薫、今から宮本を何とか叩き起こすから、お前が調子が悪くて宮本に送ってもらうって体で裏からこいつを連れて出ろ。そいで、こいつの服とかおしめとか買ってこい。赤ん坊を素っ裸で長時間ほっといて風邪でも引かれたらやっかいだ。で、俺のマンションで落ち合おう。いいな」
「うん、さすがに裸のままじゃ風邪引いちゃうもんね。でも、私の調子が悪いことにするの? ぶっ倒れてるのは宮本君の方なのよ」
薫は俺の提案に首を傾げてそう返した。
「宮本が倒れたって、お前が送っていく理由付けにはなんねぇだろ。倒れたのがお前で、本当なら俺が連れて帰るとこだが、大事な客を抱えてるから代わりに宮本を行かせる。これなら言い訳が立つ」
「そうかもしれないわね」
じゃぁ、あんたが浮気したときには相当用意周到に隠すだろうから、私も注意するわと薫は上目遣いでそう言って含み笑いをする。
 ばーか、俺は浮気なんてしねぇぞ。たぶんしないと思う。しないんじゃないかな……ってか、この半マスオさん状態でんなこと、したくてもできるかってんだよっ、薫!!
 
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