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香織の許へ…切り取られた青空-いと-29

香織の許へ


夜、仕事を終えた私は、その足で茨城にある香織のアパートに向かった。
香織が辿った道を逆に進む…彼女は最初の時はもちろん、2度目のあのときも、一体どんな気持ちで電車に揺られていたんだろう。きっととんでもなく心細かったはずだ。私の病院行きの承諾に安堵でその場に座り込んでしまうほどに。そこまで想われる資格は私にはないというのに…

いや、前を向かなければならない。これからの彼女と2人の新しい命を2度と悲しませないように歩かなければ。
そんなことを考えながら電車に揺られて、私は彼女のアパートの前に立った。

「今、明日の分の予定投稿してるんです。」
ドアを開けながら彼女はそう言って私を招き入れた。
「あ、更新…いろんなことがあってすっかり僕もパソコン触ってなかった。」
「いろんなことがありすぎて、何から話したらいいか、何を話したらいいかもうわからなくなっちゃってるんです。だからいっそのこと明日私の両親に許しをもらって、明日って言うかあさってになるのかかしら…午前0時きっかりに予定投稿で結婚しちゃいます報告しようと思うんです。」
それがいいかもしれない。私たちの場合、言えない経緯の方が多い。
「そうだ、エイプリルさんも一緒に予定投稿でだしません?」
「それがいいかな。君が終わったら、パソコン貸してくれるかな。」
香織のブログから私の名前が、私のブログから香織の名前が出てくれば、みんなは絶対に相手である彼女なり私のリンクを押すだろうから。
「それと…ちょっと気になったんだけど、いい加減エイプリルってハンドルネームで呼ぶの止めてくれないかな。明日は君のご両親にも逢う訳だし、そういうのなんだか不自然じゃないかな。」
「でも、エイプリルさんも、エルちゃんって…」
「ごめん、だから僕も練習するから。えっと…香織…ちゃん。」
「りょ…亮平さん…」
私たちはその後、気恥ずかしさで笑うしかなかった。

「これからよろしくお願いします。」
不意に香織が向き直って真顔でそう言った。
「こちらこそ。お袋じゃないけど、こんなので良いの?」
「そう、こんなのが良いんです。きっかけ作ったの私じゃないですか。」
彼女はそう言って笑った。その時、私は香織を抱きたいと思った。しかし、私たちの命の事を考えるとそんなことはできるはずもなかった。
(これは罰だ)と私は思った。しかし、この罰はなんて甘やかな罰なんだろう。私は香織にそっと口づけた。










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