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象が踏んでも壊れない 2-希代の魔術師14

「お久しゅうございます、王妃殿下」
ビクトールは、王妃にひざまづいてそう言った。
「今まで通りクラウディアで良いわよ。あなたに畏まられると、なんだか妙だわ」
それを見て、クラウディアはそう言って苦笑する。
「そういう訳にはいかないでしょう。それに私はあなたが知っている子供の私ではないのですよ」
それに対してそう返すビクトール。そう言えばお母様はグランディール出身だったとエリーサは思い出す。クラウディアは嫁してから一度も里帰りしていないので、エリーサはすっかりそのことを失念していた。
「まぁ良いわ。今回はウチのバカ娘の面倒を見てくれてありがとう。フローリアから連絡が来たときには、ほっとしたわ」
クラウディアはそう言いながら呆れ顔の流し目を娘に送る。
「いいえ面倒だなんて。寧ろ感謝しています。フローリア様からお聞きでしたらお分かりでしょうけど、エリーサ様はいきなり飛ばされて右も左も分からないコータル殿下と私の映し身を無事にグランディールまで連れていってくださいましたから。それに、エリーサ様の家出が分かったとき、私の映し身がエリーサ様を平手打ちしたらしいんです。私のしたことではありませんが、一応お詫びしておきます」
「そうなの? それは聞いてなかったわ。でも、気にしないで、こんな跳ねっ返り娘どんどん叱ってやってよ、ためにならないんだから」
とは言え、『結果コータル殿下が無事に帰還したのはエリーサのおかげでもあるからあまり叱らないでやって』と、フローリアからは言われているんだけどねと、クラウディアはそう言って、もう一度エリーサを横目で見る。
「それにしても、これがその映し身さんからもらい受けたって言う車(カー)ってものなの? 聞きしに勝る面妖さね」
 それから、クラウディアは車に目を移してそう言った。
「お母様には馬車には見えないの?」
その言葉にエリーサが驚く。
「魔法でそう見えるようにしてあるだけですからね、魔力の高い方には通用しません。それが証拠にエリーサ様にもそうは見えないでしょう?」
それに対してビクトールが説明を加える。
「あたしは、これが最初から車(カー)だって知ってるもの。ビクが詠唱している所も見てるし」
「魔力が低ければ、たぶん車が馬車に一瞬にして変わった様に見えるはずです」
私も実はそういう経験はないんですけれどと、ビクトーリオは笑ってそう言った。それを聞いてエリーサは、
「どうせなら変わるのを見たいな、あたし」
と言った。だが、
「そしたら、あなたはマシューになって美久には会えませんでしたよ」
とビクトールに返されて、意地悪っ! と、プッと頬を膨らませた。

「さぁ、無駄話は止めてお城の中に入りましょう。陛下がお待ちよ」
それをくすくす笑いながら見ていたクラウディアは自分たちがかなり話し込んでしまっていることに気づいた。彼女はパンパンと手を叩きながら2人にそう言う。陛下と聞いてエリーサがゴクリと唾を飲み込んだ。
「もう少しお待ちいただけますか。これをじゃまにならない所に置かなければ」
するとビクトールは車を指さしながらそう言った。
「そうね、普通の馬車なら城のものに任せられるけど、今この得体の知れない物を操れるのはあなたしかいないものね」
そう言ってクラウディアも頷く。
ビクトールは、軽く会釈をして車のドアを開くと、先ほどのプリンの入った箱を取り出した。
「ではこれを。先に渡しておきます。リルムの町のMom Puddingです」
「これが噂の?」
「ええ、私もいただきましたが本当においしいです。毒味用も用意してありますので、是非陛下にも」
と言うと、車に乗り込んで車を門の隅ギリギリに寄せる。本来ならば、裏手に回らなければならないのだろうが、見えるだけで実際には馬はいない分だけ偽馬車はコンパクトだし、そのままにしておくと、城に仕える馬番に相当な魔力がなければ、居もしない馬を厩舎に入れようと悪戦苦闘することになるのは目に見えている。縦しんば術を解いたとしたら、今度は馬番が腰を抜かすほど驚くことになるだろう。大体、人間は騙せても人間より数倍敏感な馬が騒然とするのは目に見えている。
「そんな、毒味だなんて。コレあたしが買ったのよ!」
一方、エリーサはビクトールが「毒味」と言った事に反応してプリプリ怒っている。
「たとえあなたが買ったとしても、それはあなたたちしか分からないことでしょう? そんな物をいきなり陛下のお口に入れるのは許されないんですよ。ビクトールはそれを心得ているのです」
そして、母親にそう諭されて、彼女は口を噤む。だが同時にその母の言いぐさにビクトールと母との間の信頼の絆のようなものも感じて、彼女の心はざわざわと騒いだ。





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