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家出の真相-希代の魔術師 10

「それはそうと、エリーサはどうして、家出なんかしてきたの?」
 それからフローリアは、突然思い出したようにそう言った。ぎくっと、エリーサの肩が揺れる。一連の界渡り騒ぎで皆、すっかり忘れてしまっていたのだ。
「それは……」
「成婚式を見たいためじゃないでしょ。成婚式はガッシュタルトでもやったんだから」
「だって……」
「だってじゃありません!」
ぐずぐずと言うエリーサにフローリアがぴしゃりと言い放つ。
「だって、お父様がいきなり『お前の結婚相手が決まった』って言うんだもん。希代の魔術師って呼ばれてるって言うから、どんなおじいちゃんと結婚させられるのかと思ったんだもん」
だから、そうなる前に逃げたのよと、エリーサは頬を膨らませて、フローリアにそう告げた。
「お、おじいちゃん!? 私はまだ23です。エリーサ様とだって、たったの12歳差ですよ!」
心外な、とそれを聞いたビクトールはそう言って憤慨する。
「たった12歳差? 確かに、ガッシュタルト王と王妃よりは少ないかもしれないが。フローリア、いくつ離れていたっけ」
「お祖父様と王妃様は31歳の歳差ですわ」
「だから、心配だったのよ! 。それが『希代の魔術師』と結婚だなんて。あたしにだって少しぐらいワガママを言わせてくれたって良いでしょ」
エリーサが『希代の魔術師』の部分に力を込めてそう言うと、
「大体、私は自分から『希代の魔術師』と名乗っている訳ではありません、皆が勝手にそう呼んでいるだけです!
それにですね、此度は殿下とフローリア様のご成婚が第一義。私事で時間を割いている暇などございませんから。私はただ、エリーサ様に定まったお方がおられないか王様に確認しただけです。後はこちらでのお二人のご成婚式が終わり次第、正式にお話をさせて頂きにあがる所存でした」
それが何故、もう決定事項になるのでしょうと、ビクトールは半ば抗議するようにまくしたてた。
「そんなことあたしに言われても判らないわ。大体、いつあたしに会ったの? あたしはビクのことちっとも知らなかったのに」
エリーサも売り言葉に買い言葉で、会話の中に火種を放り込んでいく。
「月のきれいな夜、エリーサ様は庭園に出ておられましたね」
「ええ」
「まぁ、エリーサ、あなたまた夜更けにお庭に出ていたの? あれほど危ないと言っているのに!」
「フローリア、話が進まない」
「あ、はい」
それを聞いて、城内の庭とはいえ女がそんな夜更けて出るのははしたないと、フローリアが彼女に意見しようとするのを、コータルがやんわりと抑える。
「月に照らされて輝く頬と流れる髪、そして、満ちあふれる魔力。何もかもが私の理想でした」
「ビク」
ビクトールの歯の浮くような台詞に、エリーサが真っ赤になって俯く。
「エリーサ様、こんな歳の離れた男はお嫌ですか」
「あ、ううん、その……あたしはもっとたとえば禿頭のおじさんと結婚させられるのかと思っただけで……ビクなら別に……」
 希代の魔術師と呼ばれた男と、跳ねっ返りの家出王女の会話はまだ続いていたが、コータルはフローリアに目配せすると、気づかれないように彼らの側を離れた。もっとも、よほど主張しなければ外野の存在に、彼らは気づかないだろうが。
「あの魔法の研究にしか興味のなかった男が。変われば変わるものだな」
コータルは、自身の妻にそう言ってニヤニヤと笑った。
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