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ええーっ、こっちも? -帰ってきた道の先には……30

 宮本と絵梨紗とのいちゃいちゃが見てられなくなって、俺が病室を出たら、そこに薫が来ていた。
「目が覚めたからって、とっととほっつき歩いて大丈夫なの?」
薫は口を歪めてそう言った。
「ああ、医者が首を捻るくらい完全元通りだぜ」
ホントのことを言えば、最初から怪我なんかしてねぇんだけど。それを説明できないし、説明する気もねぇけど。
「また、いい加減なことを言う。ちゃんと寝てないと、宮本君みたくぶり返すわよ」
というと、薫はやれやれといった表情でそう返す。
「いい加減じゃねぇさ、薫。俺に今あの灼熱地獄に戻れなんて言うなよ。自分の病室なのにいたたまれないったらありゃしねぇ」
「ああ、宮本君と絵梨紗のこと? 確かにあれはね。ホント、いつの間にあんなに仲良くなったんだか」
どうせあの単純な宮本のことだ。オラトリオで惚れた女のドッペルに、運命でも感じるとか思って迫ったんだろ。それに、今んとこ10歳の絵梨紗は宮本よりチビだからあいつのコンプレックスは刺激されないだろうしな。
「薫、小学生はは夏休みだからともかく、お前仕事は良いのか?」
そのとき、俺は今日が平日だってことに気づいて、薫がなぜ今ここにいるんだろうと思った。。
「うん? 今日は有給……ってか、もう私職場に戻れないかも」
それに対して薫は口ごもりながらそう答えた。
それにしても辞めるっぽい発言なんて聞き捨てならない。「何でだ」
「うん、ちょっとね」
びっくりして聞き返した俺に、薫の口は重い。
「俺のせいか?」
「違うよ、鮎川のせいじゃない!」
「じゃぁ、何だよ」
「言わなきゃダメかな」
「言わなきゃ解んねぇだろ。それに俺に言えないっつーことは、直接じゃなくても俺らの事故が関わってるって思って間違いないんだろ」
事故の一言に、薫の頬がぴくっと動く。
「じゃぁ、結局、俺のせいじゃねぇか」
「違うよ!!」
それでも、違うと言い張る薫は、泣きそうになっていた。お前、何隠してんだ?
「じゃぁ何だってんだよ!!」
俺はだんだんいらいらしてきて、そう怒鳴った。
「鮎川、声デカい」
薫はいきなり急に声のトーンを落として小声でそう言った。ハッとしてあたりを見ると、声を荒げて言い合いをしていた俺たちはいつの間にか他の患者や面会者に遠巻きに見られている。
「お前が、ちゃんと理由を言わないからだろ」
だから、俺も内緒話みたいに、薫にそう耳元で囁いた。
「バレたの」
すると、薫はぼそっとそう言った。
「誰に? 何が?」
主語も述語もかっ飛ばしてしゃべんなってんだ。何が何だかちっとも解んねぇと思っていると、薫は意を決したようにその理由を口にした。
「会社に、私が」
「会社に、お前が?」
「櫟原(くぬぎはら)宗十郎の孫だってことがバレちゃったの」
櫟原宗十郎ったら、ウチの会社の会長の名前じゃん。
「へぇ、お前、会長の孫だ……ええーっ、か、会長の孫!!」
「だから鮎川、声デカいって……」
思わず俺が挙げてしまった素っ頓狂な声に、薫はこめかみに手を当て、口をへの字に曲げてそう言ってため息をついた。

 ええーっ、あっちは本物の姫だが、こっちも姫級かよ。俺の方は向こうは王子でも、こっちは完璧フツーのリーマンなのにさ。


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