スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

承諾-切り取られた青空-いと-25

承諾


病院を出て私たちはその足で私の実家に向かった。

「ただいま、親父は?」
「あら、こんな時間にどうしたの。お父さんなら5時過ぎには帰ってくると思うけど…何か用なの?」
突然平日の昼間なんぞに帰ってきた息子に、母はちょっと驚いた様子でそう言った。
「ああ、ちょっと…」、
それから、母は私の後ろに香織がいるのを見つけて不思議そうに会釈した。全く…さんざん嫁はまだかとせっついていたくせに、実際に連れて来くるとなると意外と反応しないもんなんだなと私は思った。私は母に香織を紹介しようとして、
「あ、彼女は設楽香織さん。実は結婚を…」
とまではいえたのだが、それ以上母に説明をさせてはもらえなかった。母は、結婚という二文字にいきなりテンションを上げ、こう叫んだ。
「え~っ!亮ちゃん、やっと結婚する気になったの?!しかもこんなにかわいらしい人!!」
そして、今度は香織に駆け寄り、
「ねぇあなた、あなたホントにこんなのでいいの?」
と言った。
「はい。」
香織は面食らいながらも笑って答えた。
「こんなのって、一応自分の息子だろ。」
「あら、自分の息子だから言うのよ。とにかく早くお上がんなさい。お父さん早めに帰って来ないかしら。」
それから香織にスリッパをすすめて、
「香織さんでしたっけ、散らかしてますけどどうぞ。全く…亮ちゃん、急に連れて来ないでちょうだい。早めに言ってくれたら掃除位するのに!」
と言いながら母は、パタパタとスリッパの音を鳴らしながら、リビングに駆け込んだ。
「急に来て本当に良かったんでしょうか。」
香織はまた不安そうな顔になった。
「本来は、いろんな手順を踏むべきなんだろうけどね、そうは言ってもゆっくりしている時間もないだろ。心配しないで、お袋あんな言い方してるけど、本当は嬉しいんだよ。後ろから見てると、今にもスキップしそうだったよ。」
私はそう言って彼女の手を握った。

そう、私たちに時間はなかった。確実に大きくなっていくであろう彼女の中の命のことを考えると、双方の両親の承諾、彼女の会社のことそしてこれからの私たちの生活など…悠長に構えている暇などまるでないのだから。

そして、父の帰宅後改めて私たちは私の両親に結婚の承諾を求めた。彼女の妊娠の報告もした。
「そりゃウチはね、いただく方だしもう万々歳だけど…亮ちゃん!何であんたがあちらにまず伺わないの!身重なのに茨城から来させるなんて、お母さん情けないわ。」
「…それは、私が勝手に来ちゃったからで…」
母の剣幕に慌てて香織がフォローに入った。
「ごめんなさい、香織さんは悪くないのよ。どうせこのバカ息子鈍感だから、気づかなかったんでしょうからね。でもね、そういうことしてるんだったら、可能性ぐらい考えても良さそうなもんでしょ。」
そういわれると実も蓋もない。可能性はあるとは思ってはいたが、一回で見事に大当たりするなんて思いもしなかったというのはやはり男の側のエゴでしかないのか。しかし、嬉しくなればなるほど怒り散らすというのは、どうも我が家の家系らしい。

「香織さん、今日はウチに泊まっていきなさいね。沙苗の部屋掃除するから。」
「あ、でも私明日は仕事…」
「あなた、これから茨城に帰るつもりだったの?仕事をないがしろにしろって言わないけど、今は子供のことを優先して。明日朝ゆっくり時間をかけて帰りなさい。」
「本当にそうですね。明日の朝、会社に電話入れます。」
香織はそう言って頷いた。
「それから亮ちゃん、できるだけ早い内にあちらに行きなさいよ。で、殴られてらっしゃい。」
「何で、そうなる訳…」
「他人様のお嬢さんを傷物にしたのよ。それぐらい覚悟して行かないと。」
確かに…そうかもしれない。逆の立場なら、殴りそうだと私も思った。

スポンサーサイト

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

comment

Secret

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。