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Turning Point 9 

 本当に導きというものはあるのかもしれない。健斗が子供礼拝に出たいと言い出した理由は、終わった後、心おきなく友達と遊びたいためだったのだろうけれど、車でしか行けないこの教会に来るためには私か篤志のどちらかが健斗を連れて来なければならない。篤志は朝早く出てくるのはイヤだというので、私が健斗を連れて行くことになった。健斗を置いてそのまま時間をつぶしても良いのだが、博美さんの
「菅沼さんも一緒にどうぞ、外に出るのも面倒じゃない?」
という言葉で、何となく一緒に子供礼拝に出るようになってしまった。ここでは、信者が子供のための伝道教材を用いてメッセージを取り次ぐ。博美さんもその一人だ。明日美ちゃんは高校生で、子供礼拝の参加メンバーではないが、博美さんは明日美ちゃんがいた頃から引き続き教師を続けているのだ。
「子供への伝道は大切にしなきゃ。神様が決められた時間は人には判らないもの」
と、博美さんはしみじみと言った。命の期限が人には見えないことを身に染みて感じている彼女だからこその発言だと思っていると、博美さんはぺろりと舌を出して、
「うふふ、でもそれは表向き。本当はね、子供がしっかりと信仰を持ってくれれば、教会から離れることはないでしょ。今のご時世、菅沼さんみたいに家族で新たに来てくれる人たちなんてなかなかないのよ。増えなきゃ減らさない努力をしなきゃ」
と言った。しかし、彼女は根っからそんな打算的に考えている訳ではなく、きっと関わった人が一人と漏れるとなく、永遠の生命を得てほしいだけみたいだ。
 それに、安藤師は取り立てて難しい学術的な教義を話している訳ではない。それでも勉強からはるかに遠ざかっていた私にはそこそこハードルが高かった。子供礼拝の聖書の言葉は、私の心の中にどんどんと染み込んでいった。
 それで私は、自分でも聖書を読もうとしたが、大人の礼拝でもいっぱいいっぱいなのに、一人で聖書を読んでもぜんぜん解らない。
「ねぇ、子供礼拝の時に持っている手引書? あれって、どこで買えるんですか?」
「へっ、何で?」
「一人で聖書を読んでみたいと思うんですけど、どこから読んだらいいか分からないし、読んでも意味分からなくて」
私のその発言を聞いた博美さんは
「聖書読みたいの? うれしい!!」
と言って飛び跳ねんばかりに喜んだ。そして、
「教案を使わなくても、聖書を読むためのデボーションガイドっていうのがあるの。持ってるから見せるよ」
と言いながら、礼拝用の鞄から一冊のA5の冊子を取り出した。左のページには、日付とその日の聖書の架所が書かれてあり、そのところに合わせた短い信仰の話が載っていて、右のページに、その聖書の架所を読んでの自分の所感を書くようになっている。しかし、これだけでは自分だけで読むのとたいして変わらないと思ったら、いきなり読まないように、別紙でその聖書の架所の解説(注釈というらしいが)がついていた。それでも、使い込めるようになるにはそうとう時間がかかりそうだ。それまで忍耐は持たないだろう。そう思っていると、
「ねぇ、一緒に聖書研究しない?」
と博美さんが言った。
「いえ、その……」
「一人でするより二人でした方が絶対に解るよ、ねっ」
「え、ええ……」
「ホントに? うわっ、楽しみ!!」
博美さんの勢いに呆気にとられて思わず頷いてしまった私。それを見て彼女は、喜々として今にも踊り出しそうだ。昔の遺恨とかがないのかとかいうレベルじゃない。どうしてそこまで私と関わりたいのだろう、そう思って首を傾げるほど彼女は私と友達になりたがっていた。  
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