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道の先には……19

 城に入った僕たちにまるで卒業式みたいに両側に人の垣ができる。卒業式と違うのは彼らのほぼ全員が男性で、拍手の代わりに臣下の礼をとっている所だろう。
 人の波を進んで、広い部屋(謁見の間)に入ると、僕はやっと床に降ろしてもらえた。そしたら、マシューがさりげなく、僕に脇(肩じゃないのが本当に悲しいけど)貸してくれた。王様に謁見するのに座ったりはできないもんね。
 すると、王様が謁見の間につく前に、一人の女性が入ってきた。彼女はまっすぐ先輩のところに来て、
【コータル様ご無事で何よりです。本当にわたくし、心配いたしました。良かった】
と言った。王子様の名前ってコータルなの? 僕はびっくりする反面、マシューが幸太郎という名前をコータルと言ったことに納得した。こっちではコータルという名前が結構あるのかもしれないと。
 だけど、その女性を見てまたびっくりする。
「か、薫!」
先輩が思わず素っ頓狂な声を上げた。だって、そこにいたのは総務の谷山先輩のそっくりさんだったからだ。
 谷山先輩というのは、総務の女子社員で、先輩と売り上げの伝票のことなんかでつば迫り合い繰り返している、先輩とは犬猿の仲って感じの人だ。確か、谷山先輩のお祖母ちゃんがイギリス人で、どことなく日本人離れした顔(先輩はそれを『人間離れした顔』なんて茶化すけど)だから、この外人っぽい異世界集団にいても、僕らよりもっと違和感ないんだけれども。
 そのとき、谷山先輩もどきの体が傾いだ。先輩がとっさに彼女の肩を抱いて支える。
【フローリア姫様、大丈夫ですか】
それを見てお付きの侍女が慌てて彼女に近づいたが、先輩はそれをやんわりと制して、そのまま彼女を抱いたままでいた。そうか、谷山先輩もどきが、ガッシュタルトからきたフローリア姫なんだ。状況から考えると彼女はコータル王子の婚約者みたいだから、ふらつく婚約者をさっさと侍女に預けちゃうのはまずいもんね。
【姫様は殿下が消息を絶たれてからほとんど眠っておられませんでしたから】
侍女がそう補足する。
【だって、わたくしコータル様ともう会えなくなってしまうのではないかと不安で……】
【もう心配しなくて良い。私はこうして無事だ】
それを聞いた先輩は、そう言って彼女の頭を撫で始めた。そんな先輩の顔を横目で見ると、先輩はものすごく照れくさそうで嬉しそうな顔をしている。その顔はとても演技だとは思えない。もしかして先輩、本当は谷山先輩のこと好きだったの? いつもケンカばかりしているけど、よくよく考えてみればじゃれあっていたような……
「そっかぁ」
僕はぷっと吹き出してそう言うと、
「宮本、何を変な妄想してる」
と、先輩は横目で僕をにらんだ。僕は、
「何にも。あ、お姫様の手前、あまり日本語でしゃべらない方が良いですよ」
と返した。
 そのことで改めて僕の存在を思い出したみたいの(ホント、2人の世界だったもんねぇ)お姫様、
【セルディオ卿も、今度は誠にご苦労さまでした。あら、そちらの方は……】
とマシューを覗き込む。手紙を届けなきゃならないご本人登場で、しかもかなりの美人だから緊張しているのかもしれないけど、マシューは目を泳がせて明後日の方向を見る。
【ほらマシュー、ガッシュタルトからの手紙渡さなきゃ。本人が出てきたからって固まってどうすんのさ】
貸して貰っている脇を突っつきながら、僕はそう言った。日本語が通じるんだったら、彼の名誉のために日本語で囁いてあげたい位だ。
【手紙ですか? お父様かお母様に何か?】
僕の発言を聞いてフローリア姫がものすごく不安そうな顔になる。そりゃそうだろう、婚約者がやっと戻ってきたと思ったら、今度は親が……なんてことになれば、マジで倒れるかもしれない。でも、マシューは手紙を取り出すどころか、ますます明後日の方を向く。
 それを見たお姫様は、何かを気づいた顔になり、
【まぁあなた、なんて格甲をしているの? 正体をあらわしなさい!】
と、マシューに向かって一喝したのだった。

 マシュー! 君ってば何? 実はラスボスだったとか言わないでよね。
 
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