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バニシング・ポイント 39

 そして、開けた日曜日、君枝に連れられて衛の両親が教会にやってきた。衛の記念会(法事のようなもの)は、元々受洗を予定していた月末のペンテコステの日と、ペンテコステに(ペンテコステというのは、ラテン語で50日祭の意)因んで50日目に行うはずだ。驚いて義母に訳を聞くと、
「衛に会いに来た」
と言う。だが、聖徒の墓は教会にはなく、市営の共同墓地の教会のブースだ。それに、まだちょうど一週間しか経っ
てない今、納骨はしておらず、逆に遺骨は寺内の家にある。首を傾げた博美に義父は
「わし等もあいつと同じとこに行きたいでの」
と言った。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん隣に座ろ!」
明日美が満面の笑みをたたえて彼らを席に導き、週報を見て受付で貸し出された聖書のページを繰って、今日語られるメッセージの聖句を示した。

 そして、50日目の記念会に訪れた徹もまた、自宅近くの教会に通いだしたと言う。衛の苦しかったはずの状況でのあの穏やかな顔が何となく心に残り、末息子の和馬を連れて行ったのだが、そこに学校のクラスメートがそこにいて、次もと誘われた。半ば遊びの延長なのだが、小学生の頃は信者の子供でもそんなものだ。
 和馬が牽引する形で、両親が出席するようになり、次に長兄の佑樹が音楽集会に、真ん中の雛子が英語クラスに参加するようになった。

 そして、クリスマス礼拝の日、博美をさらに喜ばせる出来事が起こった。菅沼冴子がその夫と共に受洗したのだ。
 あれから、冴子と博美はまるで本当の姉妹のように仲良くなった。元々同じ男性を選ぶくらいだから、性格的にもにているのかもしれない。
「あ、これ美味しい。あとでレシピ教えてね、博美さん」
クリスマスの礼拝後の祝会で博美の持ってきた料理を摘みながら冴子がそう言う。それに対して、博美は頭をかきながら、
「でも、細かい分量なんて分からないよ、いつも適当だから」
と答えた。
「ほんとに……適当なのになんでこんなに美味しいのかなぁ」
「適当だからだよ、必要な分だけちゃんと入れてるんだよ」
ため息をつく冴子に冴子の夫が笑いながら言う。
「冴ちゃんは生真面目なんだよ」
「その言葉、そっくりそのまま博美さんに返すわ」
「私はいい加減だよ」
博美はそう言いながら、ある意味自分の融通が利かないこの性格が衛を死なせてしまったのではないかとふと寂しくなった。
 だが、目の前で談笑している菅沼夫妻を見て、思い直した。衛があんなに早く逝ってしまったことは辛かったが、それがなければ、衛の両親や兄弟がこぞって教会に来ることも、冴子たちが来ることもなかった。そう考えるとそれが神のみこころだったんだとも思う。衛は恵みの初穂として立てられたのかもしれない、博美は改めて衛とちゃんと天国で会える様に自分を整えようと思った。
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