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バニシング・ポイント 19

 夫婦のつながりは性行為だけではない、それは博美にも解っている。でも、衛が選んだのはなぜ自分なのだろう。もっと他に相応しい人がいるはずだと思ってしまう。
 そして、博美の口からは明日美のその日の様子以外の言葉はなくなった。衛も博美に無理には話しかけなくなっていった。帰宅時間は徐々に遅くなり、新婚時代には決してしなかった休日出勤もするようになり、博美は明日美と二人きりで過ごすことが多くなった。

「ほら、テラさん、家に着きましたよ」
忘年会の日、衛は俊樹ともう一人北村冴子という女性に支えられて帰宅した。
「すいません、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、テラさんにはいつもお世話になってるっすから」
そう返す俊樹の呂律も些かあやしい状態だ。
「堀木さん、大丈夫ですか?」
博美が心配してそう尋ねると、
「俺? 俺は大丈夫っすよ」
俊樹は博美の言葉に敬礼して答えた。一方冴子は
「私がこれから送りますから。では寺内さん、失礼します」
と、衛ににこやかにほほえんだ後、ちらりと博美を見た。衛に向けた視線とは対照的な刺すようなもので、その視線に博美はうっすらと寒気すら感じた。
 
 それから寺内家に、博美がとると無言で切れてしまう電話がかかってくるようになった。衛が家にいるときにはかかってこないので、博美が怯えているのが衛には今ひとつ分からない。
「俺がいる時にかかってきたら、間髪入れずがつんと言ってやるから」
と言って笑ってやることしかできない。

 そんなある休日、衛たちは近くのショッピングモールに買い物に出かけた。久しぶりの買い出で心なしかいつもより会話も弾む。
 しかし、そんな衛の表情がある一点を見て固まった。衛は、
「なぁ、ちょっと用ができたから、そこの〇×ドーナツで待っててくれるか。すぐ戻ってくる」
と言うと博美の返事も聞かずにはしっていった。博美は追いかけたい衝動に駆られたが、明日美のベビーカーを押していてはそうもいかず、仕方なくドーナツ屋に向かった。程なくして衛も合流したが、何か落ち着かず、心ここにあらずだった。

 そして、それから三日経った日の午後、衛のいない寺内家の電話が鳴った。
「はい、寺内です」
「奥様ですか」
「どちら様でしょうか」
何か宣伝の類だろう、そう思いながら博美は相手の名前を聞いた。
「私、北村冴子と申します」
「ああ、主人の会社の? 主人はまだ会社ですけど」
今日は普通に朝出勤して行ったのだ。博美は首を傾げながらそう答えた。
「今日は奥様にお電話いたしました」
「私に? 何かご用でしょうか」
ますます訳が分からなくなっている博美に、冴子はいきなりこう切り出した。
「奥様、ご主人と……衛さんと別れていただけませんか?」
と……

 
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