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バニシング・ポイント 17

「それがどうして問題なんですか!」
妊娠報告だというのに、問題だという鹿島の言葉に衛は声を荒げた。
「本当なら私だって素直におめでとうと言ってあげたい。でも、無事に生まれてもそうでなくても、子供はこれっきりにしていただきたい。私はそれだけをあなたに言いたかったんです」
それに対して鹿島はそう答えた。
「お腹の子供に何か問題があるんですか?」
「それは……症例自体が少ないので、まだ現時点では何とも言えません。ただ」
「ただ?」
「ただ、妊娠出産は長丁場。体質が全く変化してしまうこともある大変な作業です。これが引き金になって再発するケースもあり得ます。その場合、投薬などを考えると、妊娠の継続はまず難しい。でも、博美ちゃんの性格ではそうなった場合でも、頑として子供の命を優先するように言うでしょう。大抵の場合、女性はそう主張する方が多いです。実際、今日も私このことを持ち出したら、『私の命もこの子の命も同じ命でしょ? 命の重さに変わりはないはずです』と睨まれてしまいましたよ。
そうは言っても私にとっては博美ちゃんは彼女が12歳の時から共に闘った仲間だ。これから生まれてくる命を蔑ろにするつもりはありません。ですが、私は彼女を失いたくない」
鹿島はそう言って苦笑した。
「だから、博美ちゃんにはあなたに避妊してもらうように前々から言ってあったんですが、そのご様子ではやはりあなたにはそのことは言ってなかったようですね。そう思いましたんで、今日はあなたに直接お話ししたほうがと思いましてね」
衛は鹿島の言葉に黙って頷いた。

「これからは担当は産婦人科に移行しますが、私もできる限り協力はするつもりでいます。母子共に無事で生まれてくるように。ただ、その後は避妊を心がけてください、お願いします」
「仰ることは解りました。でも妊娠を避けるのなら、その……」
衛も普段、そういった話を仲間内でしていないこともないのだが、さすがに自分よりも一回りも年上の鹿島に直接的な表現で言うことは憚られた。
「ああ、性行為のことを心配しておられるんですか。性行為自体はよほど激しい一晩中とか言うのならともかく、一過性のものですから十分大丈夫ですよ」
鹿島はそれに対して無表情でそう返した。

 そして、話し終えた衛は鹿島と別れて自宅へと向かった。その道中、衛の心は重かった。博美はそれこ嬉々として自分に妊娠の事実を伝えるだろう。その笑顔を見るのが今、無性に怖かった。
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