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バニシング・ポイント 16

 それから2ヶ月後のことである。職場で、衛のデスクの内線電話がなった。
「寺内さん? 鹿島様という方からお電話です」
総務の女子社員がそう告げた。しかし今、衛には鹿島という顧客はいなかった。誰かが紹介してくれたのだろうか、首を傾げながら電話に出る。
「お電話ありがとうございます。営業部、寺内です」
「あ、寺内衛さんですか。こちら、××大学病院の鹿島と申します」
そして、衛は××大学病院と聞いて一瞬にして血の気が引いた。博美があの病気で入院していた病院であり、今日は再発のための定期検診に行っていたからだった。
「実は、博美ちゃんの事で、一つだけ申し上げておかないといけないことがありまして……」
「今からそちらに伺っていいですか!」
つづけて用件を話そうとした鹿島の言葉を制して衛はそう言った。たぶん再発したのだ。そんな宣告を職場でなんか聞きたくはない。
「今からですか? 今からはちょっとムリですが、今日は六時頃には仕事は終わります。その後なら……」
「分かりました。6時にそちらに伺います」
「では、1階のコーヒーラウンジで待ってます」

 それからは一日まるで仕事にはならなかった。衛は定時で仕事を終え、慌てて会社を出た。
 早めにコーヒーラウンジに着いてから約15分後、5分遅れで鹿島はそこにやってきた。
「すいません、わざわざ時間取っていただいて」
「構いません。僕もこの事は医師としてではなく、インターンの頃から知っている博美ちゃんの古い友人としてあなたに言っておきたかっただけですから」
鹿島はそう前置きしてから、
「それで、今日の検査の事ですが、再発の兆候はありませんでした」
衛はとりあえず再発していないと言われて安堵した。
「ですが、一つだけ問題があります」
何か別の病気にでもなったのだろうか。だが、鹿島の答えは違っていた。
「博美ちゃんは妊娠しています」
妻の担当医はにこりともせず、衛にそう言ったのだった。
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