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バニシング.ポイント11

夜、衛は博美に電話をした。
「昨日は、ゴメンな」
「何が?」
いきなり謝る衛に博美は怪訝がる声で返した。
「無理矢理食わせちまったろ」
「そんなの謝らなくていいよ」
「十二指腸炎だって?」
「……うん」
「あのさ、俺で良かったら相談に乗るけど」
「へっ?」
「十二指腸なんだろ? 十二指腸が悪くなるのって神経からくることが多いって聞くから」
「べ、別に悩みなんてないよ」
「そっか、ならいい」
「変な奴」
あっさりと引く衛に、博美はそう言って笑った。
「なぁ、ずっと側にいてくれ、な」
しかし、衛がそう言うと、その笑い声が少し震えた。しかし、そのことを気にもとめていないかのように、衛は歌い始めた。それは彼がコンサートの後コクる時にかけようと思っていた曲、「La luce la ciamo’」だ。

『La luce la ciamo' 君がいなければ僕の世界に色はなかった。
La luce la ciamo’ 照らされて僕は僕になる』

「私、いつまで一緒にいられるか分からないよ」
歌を聴き終わった後、口を開いた博美は涙声だった。
「そんなの誰だって同じさ。俺だって明日事故で死ぬかもしれない」
「そりゃ、そうかもしれないけど」
「そう、人間明日どころか数秒先のことだってわからない。だから変に欲張ったらあっと言う間に命取られるとかお前、今でもそんなことを思っているのか?」
「そこまでのことは思ってないよ。ただ……今までのようにいつでもお迎えに来てくださいって言えなくなってる」
「は!?」
“お迎え”のフレーズに、衛は思わず聞き返す。やっぱ、ずれてるよなと思う。
「私が命を長らえた意味って何だろうって考えたら、怖くなったの。だって意味のあること何も私にはできてないんだもん……」
生真面目すぎるんだよ、博美は! こんなもんいつまでたってもムードなんか出る訳がない、こうなりゃ……
「バカだな、今はできてなくたってこれからややりゃぁいいじゃん。教会のセンセじゃないけどさ、『祈りは聞かれる』んだろ。お前がそれを見つけるまで、神さんはきっとお前を死なせたりしないさ。んでさ、見つけるためにいろんなことしなきゃな。ま、手始めに俺とつきあおう」
衛はそう言って、ボリボリと頭を掻いた。
「どうしてそこに行き着く訳?」
「まぁさ、んと……一人の男を幸せにするのって、結構意味あると思わねぇか」
「そうかもね。それが衛である必要はないけど」
「でも、俺以外にそんな物好きいるのかよ」
「わかんないよ、いるかもね」
「言うよな、お前」
人生に悩んでる割には。
「でも、手っ取り早いし、衛でいいよ」
「俺で良いよって、なんだよ」
「だからそのままの意味!」
「ま、いいか。ほんじゃまつきあうって事で。また明日電話する」
そして、衛は博美の承諾を聞いた途端、電話を切ってしまった。
博美は、切れた電話の音を聞きながら、
「衛が良いんだよ」
と小さな声でつぶやいていた。当然ながらそれは衛の耳には届きはしないのだが。












お詫び

主人公の名前を名村裕美としておりましたが、設定の関係もあり、名村博美に変更させていただきます。

どっちでも良いじゃないかと言われるかも知れませんが。何となく譲れなくて……
お詫びして訂正し、ご報告です。
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