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Love Grace 2

お母さんは大賞をとったその賞金で、もう一台パソコンを買って、それもネットにつないだ。
でも、あいかわらず、お母さんはエディターの使い方も、原稿のメール送信の仕方も知らない。

結局、何とか覚えたCD焼きつけで原稿をコピーして郵送するんだったら本当はネットにつながってなくてもいいはずなのだが、彼女の本心は実は別のところにあったのだ。
彼女はちゃっかりとゲーム機のインターネット配線をついでにお願いしていた。要するにお家でカラオケがしたかったらしい。
「賞金なんて一回こっきりなんだから。なかったと思えばさ」

だけど、一番なかったことにできなかったのは当のお母さん本人。あれから、編集部の担当の人が来て、とっとと次の作品を書かされていた。結局、今まで勤めている仕事をまだ辞めていないお母さんは、彼女が思っていたほどカラオケなんてできない位、家では毎日パソコンに向かって原稿を書いていた。

そしてなんと、その作品があの「青木賞」にノミネートされたというのだ。「青木賞」と言えば「喜多川賞」と並ぶ権威ある文学賞だ。

発表の当日、我が家は編集部の人が前日から詰めているわ、外には報道陣がいるわと、ピリピリとした空気が流れていた。

だけど、そんな中、お母さんだけは妙に冷静でお茶(偶然見つけたんだとはしゃいでいたマンゴーフレーバーの紅茶)なんか入れている。やがて、
「お茶入りましたよぉ」
と、私たちはもちろん、紙コップに入れて外にいる報道陣にまで振る舞ったときには、この人ってやっぱり凄い人なのかもしれないって、一瞬だけ思った。

それからたった2時間後、お母さんはその作品が「青木賞」に選ばれたと連絡があってから逆に震えだし、
「絶対に選ばれないと思ったから、わざわざ無駄足踏ませたから悪いなって思って、お茶差し上げたのに……ホントに私なんかがもらっていいんですか?!」
と受賞の感想を聞かれた記者に逆に質問で返した。

そっか……あの余裕は、絶対に選ばれないという逆の自信だった訳ね。あたしはその時、そのことに妙に納得しちゃったのだった。
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theme : オリジナル小説
genre : 小説・文学

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