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オレのプレシャスブルー-ボクのプレシャスブルー10

 その日、私と純輝は揃って「プレシャスファイブ」を見ていた。

「ゴメンな、楓がジューンブライドじゃなきゃヤダって聞かねぇんだよ。欧米じゃないんだから、六月の結婚式なんて雨ばっかりなのにな。女ってどうしてそこに拘んだろうな」
純輝は画面を見つめたまま私の方を見ないでそう言った。彼は最近、私の足の調子が思わしくないことを心配しているようだ。
「大丈夫、たかだかチャペルの中を歩くぐらいで、心配することはないさ」
「だけどさ、バージンロードって布が引いてあんだろ? もし躓いて転んだりしたら……杖は使えないしさ。そもそもクリスチャンでもないのに、女の憧れとかで教会式に拘るなってんだ」
 ああそうか、彼は私が転ぶことを怖れているのか。彼はあの時さくらに平手打ちされて怒鳴られたのがトラウマになっているのかもしれなかった。
「その代わり、楓がしっかり支えてくれるさ。ところで、それは女の子の憧れとか言うんじゃなくて十年前の運動会が原因らしいぞ、楓のジューンブライド願望」
「へっ?」
「あの時俺が治人を引っ張って走っただろ。あれを未だに根に持ってるんだよ。『あたしの時はお母さんだったのに、治人だけずるい』だそうだ。だから、運動会と同じ頃に一緒に歩いてほしいんだと」
「ホントに?! オレにはそんなこと一言も言ってなかった」
「お前に言えば、あれはお前が仕組んだことだから、気を遣うとでも思ったんじゃないか」
私がそう言うと、純輝は頭を掻いてこう言った。
「にしてもさ、よしりん愛されてるねぇ……」
「ああ、そうかもな。俺自身はちっとも男親らしいことしてやれなかったと思ってるのにな」
「そんなこと思ってたの? 泣いても抱いて歩けなくても、一緒にキャッチボールできなくても、そんなこと些細な事じゃん。そんなもん、オレだってしてもらったことねぇよ。ウチの場合は、下に手がかかるし、会社に手がかかるからだけど。な、みんなそんなもんだよ」
私の言葉に純輝はそう言って、何とも晴れやかに笑った。あれから、もう一人生まれたから、純輝は6人兄弟。その上父親は嫁の父親から引き継いだ会社を切り盛りしている。生まれたばかりの事は本人の記憶にはないだろうから、触れ合った記憶は薄いかもしれない。だが、君の父親は嫁の祈りが通じて義兄そっくりに生まれてきた君を、それはそれは大切にしてきたんだぞ。それだけは、解かってやってくれよ。

「たっだいまぁ~」
その時、買い物を終えた楓とさくらが家に戻ってきた。
「何よ、男二人揃ってまたそんなもん見てるの? 相変わらず父子仲良いことで。結婚したらちゃんと家に帰って来てよ」
楓はそう言って新居に必要な物を仕分けして、用意してある箱にしまいながら笑う。まるで私と純輝の方が親子で、自分が嫁にでもくるように。
「バカ、お前がいるから毎日来るんだろうが。そりゃ、いきなり二人ともいなくなったら、よしりんが寂しがるだろうから、時々は来るだろうけど」
「時々って、どれくらい?」
「だから時々!」
まったく……父親にやきもちを焼く娘なんぞ聞いたことがない。その当の父親は、大事な娘を掻っ攫っていくその男にもっと嫉妬しているのをこの娘は解かっているんだろうか。
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