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ボクのプレシャスブルー9

「治さ、お父さんに肩車してもらってる奴のことを食い入るようにみてたんだ」
すると、純輝は急に昔話を始めた。

-*-

「治、羨ましいか」
そう言った純輝を治人ははっとして見た後、俯いて頭を振った。
「よしりんはな、不死身のヒーローなんだぞ」
純輝はそんな治人の頭を撫でながら言った。
「よしりんが事故に遭った時、手術に13時間かかったんだってさ。もういつ死んでもおかしくない状態だったってさくらちゃんが言ってた。」
「そうなの?」
「そんなところから、よしりんは帰って来たんだ。さくらちゃんの旦那で、楓や治のお父さんになるためにさ」

-*-

「オレはただそう言っただけだよ。よしりんのことをプレシャスブルーだって言ったのは、正真正銘治だ。あの、運動会でいっしょに昼飯食った悠馬って奴いたろう」
「ああ、伏見悠馬君」
「あいつな、去年まで草尾って名前だったんだよ」
名字が変わった? そう言えば、そうだったような気がする。と言う事は伏見とは義理仲という訳なのか。私は伏見が妙に若っぽい感じがしたのも、父親になりたてだったからなのかと思った。男はその身で子供を育むことができない分、生まれてから“父親”になる者も多い。子供が親にしてくれるのだ。
「いつだっけかオレが迎えに行ったら、治があいつを殴ったって先生に怒られてんだよ。けどさ、治は絶対に謝ろうとしないんだ。『ボクは悪くないもん! 本当のことを言っただけだもん』って泣いてさ。」
治人が他所様に手を上げていたとは初耳だ。しかも、知らないこととはいえ、私は謝罪もしなかった。
「で、よくよく聞いてみたらさ、治がよしりんの自慢をしてたらしいのな。それ、そん時親父のいなかった悠馬にはキツかったんだろうな、『なんだよ、お前んとこのパパなんてショーガイシャじゃん。おじいちゃんみたいに杖つかないと歩けないクセに!』って言われて殴ったらしい」
子供と言うのは、まっすぐな分、相手の傷口にストレートに入りこむことを言ってしまうものだ。
「でさぁ、そん時治が言ったんだ。『お父さんの足にはね、チタンっていう金属が入ってるんだ。超合金なんだよ、不死身なんだ。お父さんはね、ボクの、僕だけのプレシャスブルーなんだ!お父さんはおじいちゃんなんかじゃないもん。だから絶対に謝らない!!』ってね」
 そう言えば、迎えに行った際、悠馬の母とはち合わせたこともあった。彼女は、言葉少なに保育士に礼だけを言うと、さっさと悠馬を連れて立ち去った。悠馬も母と言葉を交わしている様子はなかった。あの頃、母子は生活することにいっぱいいっぱいだったのかもしれない。そんな中、得々と私の自慢を始めた治人に悠馬は言いようもない苛立ちを覚えたのだろう。
 そして、自分がそんな風に悠馬を傷つけているとは思っていない治人は、私の名誉を守ろうとして、悠馬にかみついたという訳か。しかし、補強のためのチタンが超合金とは良く言ったものだ。
「だからさ、あの昼飯の時、名字の変わったあいつがすごくいい顔してるんでちょっとホッとした。正直、あいつと一緒に走るって分ったとき、ちょっとドキドキしたんだよな。」
プログラムには走る順番が記されていたが、名字だけだった。あの時競技が始まってから悠馬が同走者だと知って、純輝は内心焦ったのかもしれない。

 あれから時々悠馬が遊びに来るようになった。そして、妹を連れて迎えに来た彼の母の表情は、別人とも思えるほど変わっていた。
「悠馬のパパはさしずめプレシャスグリーンってとこかな、よしりん」
相変わらずその時も家に来ていた純輝は、ぽつりと私にそう言った。
 
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