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ボクのプレシャスブルー5

 私の後にはもう二組しか残っていなかった競技はあっという間に終わり、私は純輝の持ってきてくれた車椅子に乗り込むと退場門から観客席に移動した。その際にも、拍手が沸き起こる。私は気恥ずかしくて赤くなりながらトラックを後にした。

「純輝、やってくれたな。仮病か」
だから、観客席に着くや否や、私は純輝に文句を吐いた。
「人聞きの悪いこと言わねぇでくれよ。すっきりしたから、飛んできたのにさ」
それに対して、純輝はしれっとそう答えた。
「家からここまで何Kmあると思ってんだ」
「オレ、家で唸ってるって一言でも言ったか? ここのトイレで唸ってたんだよ」
「まぁ、良い。そう言う事にしといてやる。純輝、ホントにありが……」
「良い訳ないでしょ! 純輝、何て事してくれるの!!」
 だが私が渋々という感じで彼にお礼を言おうとしていたその時、反対側でビデオ撮影をしていたさくらが私たちの許にすっ飛んで来て、いきなり平手で純輝の頬を打ったのだ。
「痛ってぇ!」
「さくら!」
「純輝、芳治さんが競技中に転んだらどうしてくれるつもりだったの? 転んで補強してある部分がズレでもしたら、手術しなきゃなんないんだからね。あの時の手術から十八年も経ってるのよ、その部分にはもう肉がしっかり巻いてて、ちょっとやそっとじゃ元に戻せないんだから。最悪、二度と歩けなくなるかもしれないのよ!」
「ウ、ウソ……さくらちゃん、ゴメン。オレ、そんな大変なことになるなんてちっとも思ってなくて……」
ぶるぶると唇を震わせて怒るさくらに、純輝は塩をかけられた青菜のように一気に萎れた。
「転ばなかったんだから、良いじゃないか」
慌てて私がフォローに入るが、さくらの怒りは治まらない。
「良くないよ。もし転んだらって思いながら、ビデオ撮り続けた私の気持ちにもなってよ」
「さくらちゃん、ホントゴメン!」
涙目で怒り続けるさくらに、純輝は手を合わせて謝る。
「謝るのは私にじゃないでしょ!」
さくらにぴしゃりとそう言われて、純輝は首をすくめながら、
「よしりん、ゴメン」
と小さくつぶやいた。
「良いよ、こっちこそありがとう。久しぶりに走れて気分爽快だった」
私は笑顔でそう返した。走ると言う動詞が当てはまるかどうかも確かではないくらいの走りだが、久々に全力を出し切って「走る」ことが出来たのは本当に爽快だった。
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genre : 小説・文学

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