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ボクのプレシャスブルー-ボクのプレシャスブルー3

僕のプレシャスブルー 


そして運動会当日、空は抜けるような青空で絶好の運動会日和と言ったところだ。誰もが運動会が中止になったなんて誤解を挿む余地のないくらいの好天。
 だが、それなのに開会式が終わっても純輝は姿を現さなかった。刻々と保護者参加の競技の時間が近づく。治人は不安そうに何度も何度も辺りを見回していた。
 そして、あと三つばかりでもうその競技になると言う時、私の服のポケットが振動した。私はポケットから携帯を取り出す。
「今、どこだ。もう始まるぞ。」
私は電話の相手―探している当の純輝に憮然とそう言った。
「……ゴメン、オレパス。今朝から腹調子悪くてさ、トイレからマジ出らんねぇんだ。よしりん、やっぱ出てくんねぇ?」
「俺がか?」
純輝はため息交じりの荒い息でそう返す。今頃言ってくるなと怒鳴ってやりたかったが、掠れた痛みを堪えた声で言われて、私はかろうじてそれだけは抑えた。急な体調不良は誰にだってあることだ。
「最初は出るつもりだったんだろ。」
「ムリだ。治人に嫌がられる」
私がそう返すと、純輝は、
「えっ、治は嫌がってねぇよ。とにかくよしりんが……あ……ダメだ。そいじゃ切るから。」
と言うと一方的に電話を切ってしまった。
 治人が嫌がっていない? どういうことなんだ。確かにあの時、私の参加を拒絶した治人を純輝は表に連れ出したが、そこで何を話したのだろう。
 さくらはと見ると、ビデオを抱えてベストショットで治人と純輝をとらえようと移動をしていて、車椅子に乗っている私には彼女をつかまえて、代わりに出てもらうだけに時間はもうない。
 
 程なく親子競技の召集がかかり、私は車椅子を邪魔にならないところに停めて、杖をつきゆっくりと待機する場所に向かった。同じように児童席からそこにきた治人の顔が既に歪んで涙目になっている。
「純兄は?」
「急に腹が痛くなったんだと。治人、ビリにしかなれないけど、父さんでも良いか」
私の言葉にさらに治人の顔が涙で歪む。ああ、本当に嫌なんだなと思った時、息子の口から思いがけない一言が私の耳に響いた。
「お父さん、ムリしないで。歩けなくなっちゃうよ。ボク、コレ出ない。」
治人の眼から涙が一つ二つとこぼれる。
ああ、純輝が『治は嫌がってねぇ』と言ったのは、こういう意味だったのか。
 実のところ私の身体は、十八年経った今でも雨が降り続くと痛みで動きが悪くなる。梅雨直前のこの時期に、私にムリをさせたりしたら歩けなくなってしまうんじゃないか。治人はそんなことを心配していたのだ。
「大丈夫さ。走ったくらいじゃどうもならないさ」
「ホントに?」
「ああ」
私が頷くと、治人は何かを思い出したようにパッと明るい顔になった。
「そうだよね、お父さんはプレシャスブルーなんだから、大丈夫だよね」
「ああ、そうだよ」
私は治人の口から出てきた言葉の意味は解からなかったが、頷きながら相槌を打った。治人の顔に満面の笑みが広がった。
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