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赤い涙(改稿バージョン)16

 結局、昂は一週間生死の境を彷徨い続けた。そんな息子の側を母は片時も離れようとはしなかった。どんなにその疲労が色濃くなっても、周囲が休めと引き離そうとすれば暴れるので、しまいには鎮静剤を投与して息子の横の簡易ベッドに寝かせなければならなかったほどだ。
 
 一方警察は、昂を呼び出したササガワとイツキ言う男を探したが、行方はようとしてしれない。事務員が電話で『樹の事で話がある』という言葉に昂が慌てて反応したと言う証言から、警察ではこの二人の行方を追っていた。
ただ、樹というのが名前とは思わずイツキという名字で、二人とも男性であると誤解していたのだが。あのあと、“協力者”を失って失意のまま元の時代に帰った京介を探すことは、今の警察には不可能だった。
―まるで、煙のように消えたとしか言い様がない―
「一体、ササガワとイツキって奴はどこのどいつや! 見つけたらタダでは置かん!!」
父は警察の報告を聞いて、病院の壁に自分の拳を打ちつけた。
 
 そして、母親はその目が開いている間中、
「昂、お母さんは昂の事大好きやよ。世界中の全員が敵になっても、お母さんだけはあんたの味方やからね」
と囁き続けた。彼女は、息子がササガワたちにその能力の事で自分の存在意義さえ疑うほどに傷つけられたために、あの雨の中を彷徨い歩いていたのだと、そう解釈していた。

 何にせよ……母のその言葉は昂の潰えそうな命をギリギリの所で引き留めた。

 事件から10日後、昂はやっと昏睡状態から目覚めた。
「昂、良かった。ホンマによかった……」
そう言って手を握り涙する母親に、昂はきょとんとした様子で返した。
「すんません……あなたは誰ですか。……それで、僕は……」
しかし、その昂の一言で、母の感涙は悲鳴に変わった。
 昂はその一切の記憶を失ってしまっていたのだった。


 
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