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赤い涙(改稿バージョン)14

 それは、クロードたちの時代の医療技術を持ってしても、解消することはできなかった。手術の度に弱っていくジュジュ。
 そして、ジュジュは軽い風邪がもとで呆気なく他界してしまう。彼女が17歳の春のことだった。

 以来、クロードは時間移動の禁を犯してまでも、妹“ジュジュ”を取り戻すことに躍起になる。元々『優秀な遺伝子を遺す』事が目的であった彼らの両親は、子供たちの面倒はほとんどサポートロボットに任せて自身らの研究に没頭していた。クロードにとって、ジュジュは唯一の家族と呼べるものだったのだ。
 感情を持ったアンドロイドを作る。
心理学習プログラムの作成はクロードにとってさして難しい物ではなかった。しかし、いざそれを起動させてみた時、思ったほど樹の感情は育たなかった。幼い時から自身もサポートロボットと言う機械に育てられた分感情には乏しかったし、何より樹を機械だと知っているクロードには樹を人間として見ることはできず、つい機械として作業命令をすることになってしまうからだ。
 それに気付かないままクロードは己が人生の大半を過ごした頃、昂に出会った。
 何も知らない昂は生い先短い樹が少しでも笑って過ごせるようにと彼女の“心”にアプローチを続けた。
 結果それが、樹の飛躍的な感情形成につながったのだ。

 そう言われてみれば……昂はまじまじと京介を見た。髪は既に銀に染まってしまっているのだと思っていたが、よくよく見れば元々が銀色に近い色なのだ。寄る年並みだからではない。
 それに、度のきつい眼鏡で“武装”しているが、それを外せばたぶん、色白の日本人離れした顔が現れる。

「樹の感情形成に関わる気がないのなら、私にはもう君と一緒に居る意味はない。帰りたまえ」
京介は絞り出すように昂にそう言った。心の中では、(ジュジュのことも読んでいるのなら、何故手伝ってくはれないのだ)そう思いながら。
「帰ります。けど京介さんはホンマに樹ちゃんには心がないて思うんですか。俺、ちっちゃい時からばぁちゃんによう言われてました。『昂、物にもちゃんと“心”はあるんやに。せやから大事にせんとな、物も悲しむんやに』って。」
「ふん、バカバカしい。如何にも昔の人間の考えそうなことだ」
京介は口ではそう言っていたが、心の中は(期待はしない方が良い。期待するから余計に悲しむことになるのだから)と言っていた。

 胸の詰まる思いで去り際、今一度樹を見た昂は、はっとした表情になってこう言った。
「京介さん、これでも樹ちゃんには心がないって思うんですか。樹ちゃん……泣いてます」
その言葉に京介は慌てて樹の顔を見た。樹の両眼からは一筋ずつ、赤い液体が流れている。
「こ、これは……これは皮膚に損傷があった時、血が出ているように見せかけるための赤い薬液だ。眼のあたりに何らかの損傷があるというだけの事だ。断じて涙なんかじゃない!」
京介は震えながらそう叫んだ。
「泣いてます、絶対。せやったら命令を忘れて俺を探しに行ったことは、どう説明するんですか。京介さんは樹ちゃんに『雨の中外に出るな』って言うてたんでしょ? せやからから俺は……俺は京介さんにどんだけ言われても、もう新しい樹ちゃんとは一緒におられへんのです。そしたら、俺はこれで……」
「根元君!!」
 昂はそう言うと、さらに激しさを増し、嵐となっている雨の中に飛び出して行った。そして昂は激しい雨の中ひたすら彷徨い歩いた。もし、どこかに樹の心が落ちているなら拾って助け出したいそう思いながら……


 
 

 
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