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赤い涙(改稿バージョン)11

「ちゃんと君が風邪を引いて、治るまで来ないとは言ってあったんだが……」
京介はそう言うと、唇をかみ締めて項垂れた。
「ああ、樹……本当にどこに行ってしまったんだろう。君には何か言ってなかったかい?ぼくにはもう、あの娘の行きそうなところに心当たりがなくて……」
しかし、そう言われても、一緒に住んでいる兄の京介ですら分からない樹の行き先が、昂に分かるはずもなかった。
 思えば樹とはこの家の内と外のほんの限られた範囲内でしか会ったことがなかった。
(そう言うたら、俺らデートとかもしたこともないんや)
そんな思いに囚われて、昂は無性に悲しくなった。

『昂さんの家はここから見えますか』
その時昂は、最後にここを訪れた時、樹が自分の家を見てみたいといっていたことを思い出した。
「ここからって、窓から?」
「はい」
「この窓は家の方向いてへんから見えへん」
「じゃぁ、庭からは?」
高台にある笹川家の庭からは坂の下の町が一望できたが、昂の家はその範囲から少し南側に位置していた。
「うーん、ギリ見えへんかったと思う」
昂がそう答えると、樹はさびしそうな顔をした。
「あ、ここよりもうちょっと上の……この家のちょっと行ったとこに左に登る坂あるやん? あの上やったら見えるんとちゃうかな。起きられるようになったら、一緒に見に行こう。せや、そうしょう」
昂はそんな樹の顔を見るのが辛くて、あわててそんな風に言ったのだった。
「そうや! 坂の上!!」
昂はそう叫ぶと笹川家を飛び出し、樹に話した笹川家左手にある急な坂道を登り始めた。

 きっと樹は三日も来ない昂を心配して家を探そうと思ったに違いない。自身も病の床にいて、寂しさや不安に耐えているのだ。昂もどんなにか寂しいだろう、辛いだろうと居ても立ってもいられなくなったのではないだろうか。たとえ、そこで昂の家が見えたとしても、どれがそれか分からないというのに……

 昂は息を切らせながら坂を駆け上がった。しかし、ふと後ろを振り返ると、あんなに取り乱していたはずの京介が自分についてきていなかった。
(何でや!)
昂は腹立たしかったが、今はそんなことを言っている場合ではないと思った。一刻も早く樹を見つけないと取り返しのつかないことになってしまう。

 そして昂が思った通り、急な坂道を登り切っていきなり視界が開けた所に樹はいた。
彼女は大きな木の根元にぺたりと座り込み、まっすぐに前を見ていた。
「樹ちゃん!」
昂は樹の名を呼び駆け寄った。しかし、彼女からの返事はなく、近寄って肩を抱いた昂の腕の中に、すんなりとその身を預けた。
「樹……ちゃん?」
昂は彼女の肩を揺すぶってから、はっとして彼女の口元に手をかざした。
「い、息……してへん……」
樹がその目を見開いたまま既に事切れていると知った昂は、樹の肩を抱いたまま同じようにその場にへたりこんでしまった。
(ゴメン……こんなことになるんやったら、風邪移っても俺行った方がよかったんか? こんな寂しい思いさして、こんなことになるんやったら……こんなに待っててくれるって分かってたら、俺……)
「なぁ、樹ちゃん……何か言うてぇなぁ。俺、樹ちゃんに少しでも長いこと生きててほしかっただけなんや。なぁ、何でもええからしゃべって! お願いや、こんなに突然に逝かんといてくれ!」
昂は樹の亡骸を抱きしめて号泣した。

 雨はその降りを増してきている。昂は樹にそれ以上雨がかからないように包み込むように抱きしめたまま、ずっとそうしていた。
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comment

NoTitle

うう・・・。
ぐっと引き込まれていたところに、「業務連絡」の文字が目に入ってしまって、少し冷めちゃいましたよ~(涙)。

平謝り

マカロンさん、ごめんなさい……てな訳で、消しました。

クライマックスでこれはなかったかもしれません。

NoTitle

あらあら、消しちゃったんですね。ごめんなさい。

空白行を多くする感じでも良かったですのに・・・。

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