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夢の中へ……赤い涙(改稿バージョン)8

夢の中へ……


笹川家が昴のまえから忽然と姿を消してから二週間が過ぎた。昴自身もようやくあれは夢を見ていたのだと思えるようになっていた。
(そうや、夢やったから樹ちゃんの“声”も京介さんの“声”も聞こえへんかったんや)
昴はそう自分を無理やり納得させた。
とは言え、家のあった場所に来るとどうしてもそこに目が行ってしまう。まったく形を成さないただのシミでも、特定のイメージを与えられればもはやその形にしか見えなくなってしまうのと同じように。
忘れよう。それが出来ないのなら学校までの最短コースではあるが、ここを通るのを止めようかと、逡巡しながら結局は毎日ここを通ってしまう。
(せやよな、やっぱりな……??あ、あるやん!!)

だがその日、忘れようとしていたあの洋館がまた忽然と姿を現していたのだった。しかも、昴が来たのを中から見ていたのかもしれない、彼が笹川家の前に自転車を停めると、程なくして京介が中から現れた。
「やあ、根本君と言ったかな」
そう言った京介は、これまでの態度とは打って変わって、気味の悪いくらいの笑顔で昴を迎えた。
「京介さん……」
「嬉しいな、樹だけでなく、僕の名前も覚えていてくれたんだね」
片手を挙げての歓迎に、昴は少し首をすくめながら黙って頷いた。
「実は、今日はお願いがあるんだ。妹に…樹に会ってやってくれないかな。君に、会いたがっている。」
そして、今まで遠ざけようとしていたはずの京介からいきなり『会ってほしい』と言われて昴はますます驚いた。
「樹ちゃん、何かあったんですか?」
「樹はあの日から体調を崩していてね、外に出ることができないんだ」
「樹ちゃんが、病気……」
昂の眼に樹の白すぎる肌が浮かぶ。
「元々、あまり身体はあまり丈夫じゃない。それでもだましだましここまできた。でもそれももう……いや、何でもないよ……」
京介は昂の顔色が変わったのを見てとって語尾を濁したが、昂にはそれがどういうことなのか判った。
「だから、樹の言うことはできるだけ叶えてやりたいんだ」
「解かりました…でも……」
 昂は京介の頼みに頷いて一旦笹川家の中に入ろうとしたが、立ち止った。おかしい、これは罠かもしれない。
 確かにこの二週間、笹川家は存在していなかった。行き帰り何度も確認したのだ、間違いはない。それなのに『樹が病気』のひと言で簡単に家に入り込んでも良いものだろうか。
「でも…何だい?」
「いいえ、何でもないです。行きましょう」
首を傾げる京介に、昂は頭を振ってそう答えた。もし昂がそれを口に出したとしても京介は断固否定するだろう。
 それに、それが事実だったとしても、それはそれで良いのではないかと思ったのだ。

 樹の体調が悪くなったと同時に家が消え、そして今現れた。まるで樹の思念がこの家自体を作り出しているかのようだ。その樹が今、自分に会いたがっている……
 彼女の作りだした幻なら、たとえそこに罠が仕掛けられているとしても、飛び込みたいと昂は思った。

 そして昂は京介に導かれるまま、夢の中へと歩を進めたのだった。
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