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交響楽(シンフォニー)14

「全く…低肺状態になったらどうするんですか。松野さんは昔からオーバーワークだったけど…休めるときは積極的に休まないと持ちませんよ。」
彼女を診た内科の高木医師は、点滴の指示をしながらため息まじりでそう言った。

やがて、病室に連れて行かれたさくらは、点滴が効いたのだろうか。昏々と眠っている。
私はそれを見届けてから、電話をかけるために病室を出た。元々夜中に母親不在なのはよくあることなのだが、今回は理由が病気だけに子供たちも心配して浮足立っているだろうし、今日はできれば面会時間を過ぎても許される限り彼女の側についていたい。そのために私の母に応援を頼んだ。

そのあと自宅に電話した。朝、急遽入院ということになり、とりあえず寝間着だけを購入し、病棟の看護師に彼女を任せた後、一旦帰って必要なものをそろえる際に、さくらの入院を置手紙で知らせただけだったからだ。
私自身はさぞ心配しているだろうと思っていたのだが、いつも元気な母が病気なのだというのは実感が持てないらしい。仕事の時のような感覚で留守番をしている様子が伝わってきて、内心ホッとした。特に治人は不安がるのではないかと危惧していたのだ。私は、多くを語らず、
「今日はお父さんも何時になるか分んないから、お祖母ちゃんのいうことよく聞くんだぞ。」
と言って電話を切った。

そして私は缶コーヒーを一本だけ買うと病室に向かった。だが、入口のところで私の足はピタッと止まった。

それは、さくらが寝ているベッドの縁でキャメルのブレザーを着た青年が、
「さくら、目ぇ覚ませよ…オレだ、オレだよ…笑ってくれよ。」
と、さくらの手をしっかりと握りしめてそう呟いていたからだった。
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