スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

密会-切り取られた青空-いと-9

密会


私は前日のかりんとの個人メールに、オフ会がはねたあと、一人でとある喫茶店に来てほしいと入れてあった。私が東京での社会人生活のころよく通ったなじみの店。あの頃はストレスで既に私は90kg近くになっていた。

「おっ、何年ぶりかね~…それにしてもずいぶん痩せたよな。」
「お久しぶりです…10年以上にはなりますよ。」
マスターはおおよそ14年ぶりでしかもすっかりと風貌の変わった私をいとも簡単に思い出した。
「病気でもしたの?」
「そう…見えますか?」
またか、と私は思った。こちらは懸命に痩せたのに、久々に会うと判で押したように病気を尋ねられる。私はその辺が不満だった。
「いや、そうじゃないならいいんだけどね。私くらいの年になるとね、見た目が変わったから聞くとそういう話ばっかだから。君はまだ若いか…」
「もう、若くはないですよ。」
「私に比べたらまだまだ若いさ…」
多分60代後半か70代頭であろうマスターは、ずれた眼鏡の位置を直しながらそう言って笑った。

こんな面の割れたところで待ち合わせはするべきではなかったかと思ったが、東京でさっと思い出せる店はここしかなかった。少々複雑な気持ちのままかりんを待つ。
それに絶対に来てくれるという自信も私にはなかった。じりじりとした気持ちのまますごす時間は殊更長く感じられた。

そして-かりんは店に現れた。
「いらっしゃい…」
店に入ってきてまっすぐ私のところに来たかりんを見て、マスターはほぉというような顔して、にやりとほくそ笑んだ。
「無事、撒いてきた?」
「みんな忙しいみたいで、そんな心配なかったわ。」
「そう」
かりんは店内を見回して言った。
「でも…このお店…」
「ああ、東京の大学に行ってたし、その後4年くらい仕事もしてた。帰ってもう14年かな…だから記事にはしてなかったかもしれないけど。」
「知らなかった。」
「今日もね、ほんとは迷ってたりしてなかったんだよ。あの時僕は誰よりも先に君を見つけてた。」
私がそう言うと、彼女は驚いたような顔をして言った。
「じゃぁ、何で声をかけてくれなかったの?誰にも会えなくて不安だったのに。」
「あまりにも君が僕の思っていたとおりの人だったから、君が僕を同じように思ってくれるかどうか急に怖くなった。」
その言葉に、かりんは頬を染めてうつむいた。

「外、出よっか…」
マスターは聞かない振りをしてくれてはいるのだが、私はやはり恥ずかしくてかりんを外に連れ出した。会計をする際に、マスターがかりんに聞こえないように小声で、
「やっぱり、若いっていいね。頑張りなさい。」
と言った。傍目には普通の幸せなカップルに映ったのだろうか。



スポンサーサイト

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

comment

Secret

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。