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さくらの進む道-交響楽(シンフォニー)8

さくらの進む道


「あのね…私助産師になろうと思うのよ。」
「じょさんし?」
最初、私はさくらが言う助産師という言葉を理解できなかった。
「小さな命が生まれるお手伝いがしたいの。」
そう言われてやっと助産師という単語に行きついたくらいだ。
「でもね、それには私、大学に入らないといけないの。あ、助産師養成学校って言うのもあるんだけどね、それはウチから遠いのよ。以前には近くにもあったんだけど、そう言う資格職業って4年制大学でなくっちゃいけないってことみたいで、それでなくなっちゃったの。」
それだけ言ってからさくらは申し訳なさそうにこう言った。
「芳治さんにいろいろ負担かけちゃうことになっちゃうけど…良いかな。」
「ダメだって言ったってさくらはやりたいんだろ。」
私の言葉に彼女はこくりと頷いた。
「俺はほとんどこの家の中でしか動けないしな。心配しなくていいよ、今だって充分俺、主夫だろ。」
さくらのその言葉に対して私は、そう言ってニヤッと笑った。
「それを言わないでよ。申し訳ないと思ってるんだから。」
するとさくらはなお肩をすぼめた。
「ごめんごめん、そんなこと思わなくて良いよ。俺は自分ができることしかやらないし、やれることがあると実感できるのが、嬉しいんだよ。主夫、大いに結構じゃないか。」

そうだ。昔私は、走り回り時間に追われることを当然のことのように思っていた。そしてあの事故で私は仕事と家族を失い、自分は存在意義さえ持たないと思った。

だが、私は今も生きている。何も問題を持たなかったかつての日よりも生き生きと生きているかもしれない。

私には今、できないことは多い。だが、できることもそれこそたくさんある。それに気付かせてくれたのは、他でもないさくらだ。そのさくらの新しい夢をサポートするのに、夫として何の不満があろう。
そしてそれは、かつての日、彼女のそれからの幸せを願って敢えて触れずに手離してくれた彼女のかつての恋人にも報いることになると思う。
「誰にでもできることじゃない。だったら、やるしかないじゃないか。そう、高広君も言ってたんだろ。」
そう言った私に、さくらは目を潤ませながら、黙って肯いた。

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