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埋火2

直前、その日は実家に泊まらず幕張あたりでホテルを探すというのを聞いた私は、
「是非、ウチに泊まってください。その日は帰しませんからね。」
と言って笑った。私が家出したあの時、もし加奈子さんが見ず知らずの私を家に入れてくれなかったら、私もこの子たちもこんな風にいなかったと思うから。それに、修司さんが言うことが本当なのなら、なにか悩みごとがあるに違いない。半分程の年齢の私に聞かせられるようなもんでもないかもしれないが、少しでも力になれるのなら…そう思ったから。
「じゃぁ、お言葉に甘えちゃおうかしら。」
そう言って加奈子さんは相変わらず明るい笑顔を携えてやってきた。

変だと言われて心配していたけど、訪ねてきた加奈子さんはいたって普通だった。今や大きくなったと言っても、彼女自身陸君と瞳ちゃんを育てているのだもの、初心者マークバリバリのママの私なんかに比べれば数段何にしても手際が良くて、お客様のはずの彼女におしゃべりしながらずいぶん手伝ってもらってしまった。

だけど、夜になって…子どもたちをお風呂に入れて一段落すると、加奈子さんが老眼鏡をかけながら食い入るように携帯でネットを開いて見ているのを目撃してしまった。
「携帯だと見難くないですか。ノーパソ出しましょうか。」
「ごめんなさい、気遣わなくていいわよ。ちょっと思いだしたことがあって見ていただけだから…」
そう言う割には、画面を見る横顔は、何だか思いつめているようにも見えた。私は黙って明日香の部屋(それまでは私の部屋でもあったんだけど、今、私たち母子はリビングを占領する形になっている。)からノーパソを持ってきて配線した。

「ありがとう。」
とお礼を言って加奈子さんが開いたページはブログで、トップにはウチの子たちとさして変わらない赤ちゃんの画像が張り付けてあり、
-おかげさまで、第三子【カンナ】が無事生まれました-
と大きな文字で書かれてあった。
「かわいい、お友達のお子さんなんですか。」
と尋ねる私に、加奈子さんは首を振った。よく見るとうっすら涙ぐんでいる。そして、彼女の口から出た言葉に私は返す言葉を失った。
「お友達じゃないわ。私が世界で一番好きな人の子どもなの。」
加奈子さんはそう言ったのだ。

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