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HANABI14

「う、ウソ…消えた?!」
茫然とその女の子を抱いたままへたり込んでいた俺の処に、
「あみちゃん、あみちゃん!!」
と血相変えてその子の母親が走って来た。俺はその母親に子供を渡した。驚いて声も出なかったその子が母親の手の中で安心したのか、急に大きな声で泣きだした。
「な、ないぞ…」
その時、真っ青な顔で降りて来たトラックの運ちゃんの震えるような声を聞いた。
「何処にも当たった跡がない。確かに何かぶつかったはずなんだが…」
運ちゃんは首をかしげながら、一之助がぶつかった辺りをまじまじと見ていた。トラックには一之助が当たった形跡はどこにもなかった。そして、少し向こうの方に空気の抜けたボールが転がっているのを見つけた。運ちゃんはそれに当たったと思ったみたいだった。確かにそれもぶつかったから、あんな風に凹んでしまったんだろうが…
「ありがとよ、お陰で助かったよ。君がいなきゃ俺は今頃犯罪者だ。」
そしてホッとした調子で俺に言った。
「俺は…何もしてないです。あれは一之助があの子を投げてよこしたから…」
「一之助?もう一人いたか?俺はあんちゃんしか見てねぇぜ。」
俺のその言葉に、運ちゃんは首をかしげた。運ちゃんは一之助の事を見ていなかった。それだけじゃない、助けた女の子の母親も、店から事故を目撃した竹林堂って和菓子屋のオヤジも誰も一之助を見ていないって言うのだ。いつの間にか俺一人が身を挺して女の子を助けたことになっている。
そして、一之助の存在を力説しようにも、一之助が追突したと思われる形跡も、そもそも一之助そのものが煙の様にかき消えてしまったのだから。

もしかしたら、一之助はあっちの時代で既に死んでいたのかもしれない、俺はそう思った。落ちのびる最中追手に見つかって、姫様もろとも殺された。それが無念で無念で、この時代の同じ年恰好の同じ名前の女の子の危機を救いに来た、そんな所なんじゃないだろうか。でも、そんなの悲しすぎるじゃないか…
「ふはは…ははは…」
いつしか俺は、何か何処にも感情の持って行き場をなくして笑いながら涙を流していた。
「もしかしたら、ホントはどっか打ってないか?」
それを見た運ちゃんの顔が、また青くなった。

「大丈夫です。どこも怪我なんかしてません。」
俺は何度もそう言ったけど、泣いてしまったこともあって、念のためと俺は女の子と一緒に救急車に乗せられて病院で検査を受けた。けど、スライディングキャッチの時の擦り傷以外、何もあるはずはなかった。
一応、その傷にばんそうこうを貼ってもらってそれでおしまい。
その間、何度も女の子の母親にお礼を言われるのがウザかった。

そうこうしている間に、母さんが事故だと聞いて血相を変えてやってきた。心配されるのは嫌だけど、連れてこられた病院は歩いて帰れる距離じゃなかったし、直接帰れるバスもなかったから、とにかく助かったなと思った。
「そう言えば昨日の本山君、どうしたの。」 
帰りの車の中で母さんに一之助の事を聞かれた。
「ああ…一之助…あいつ帰ったよ。家族の人が迎えに来てさ、一旦故郷に帰るって。」
「あら、そうなの?あの子結構おもしろかったのに。まぁでも本気ならこんな場末じゃなくって、今頃東京にでもいるだろうからそれで良かったんじゃない。」
母さんは俺の口から出まかせの台詞にそう笑って答えた。
そうさ、あいつは本物の姫様のとこへ逝った。上手く逃げ切れれば、家族として暮らせただろう姫様の処へ。俺がくしゃっと顔をゆがめると、
「圭治、あんたやっぱりどこか痛いんじゃない?」
と母さんまで心配した。
「どこも痛くない。」
俺は、それに憮然としてそう答えた。本当は一か所だけ‐心がズキズキとと疼くのを感じていたけど…
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