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HANABI5

住宅街を抜けて表通りへ。それまで興味津津って様子で歩いていた一之助がギョッとして立ち止った。
「何じゃあれは?牛もおらんのに牛車が動いておる…しかも、怖ろしい速さじゃ。」
そしてぼそっとそう言った。見ると4ナンバーのワゴン車が、速度制限を守って走っていた。俺から言わせると、どちらかと言えばちんたら走っている様に思うくらいの速度だった。でも、馬より早い?ま、どう考えても牛よりは早いだろうな。
「一之助、これからあれよりデカイのに乗るつもりだけど、覚悟は良い?」
「あれより大きなもの?!しかも乗るとな??」
一応この辺にも店はないこともないけど、服を買うにはここからバスで20分位行った隣町のスーパーに行った方が良い。俺はちらっと一之助を見た。
「一之助…怖いか?」
こいつ微妙に震えてやんの。俺がにやにや笑いながらそう聞くと、
「あ、いや…拙者何も怖くはござらん。全然怖くはござらんからな!圭治、早速その大きな牛車とやらに乗ろうではないか。拙者、た、楽しみじゃ。」
一之助はそううそぶいた。素直じゃねぇの!いや…ある意味素直か。俺たちはしばらくバス停でバスを待っていた。

やがて、やって来たバスに、一之助は思った通りのリアクションをした。必死に平静さを保っている様に見せかけているが、その様子はどう見ても『ムンクの叫び』。俺は、
「これに乗るぞ。」
と一言だけ言って、2人分のバス代を払ってバスに乗り込んだ。はぁ…往復バスに乗って、一之助の服買ったら、折角の夏休みのバイト代が…
一之助も続いてバスに乗り込むと、さっきの経験を踏まえて?一旦床にどっかりと胡坐をかいた。
「おいおい、ここはそのまま座んじゃねぇ!」
俺は慌てて、一之助の手を引っ張って、後部座席の長い部分に俺と一緒に座らせた。
「おお、これは先ほどの様には沈まんな。」
一之助は、乗り合いバスのチープなクッションにホッとした表情でそう言った。
「しかし、この牛車…」
うん?まだ何か言いたいことでもある?そう思いながら俺は一之助の次の言葉を待った。
「まるで、座敷牢の様じゃの。」
ざ、座敷牢?!俺たち護送されてるってか?俺が一之助を護送してるってか?
「じゃぁ、俺って悪代官か?もう姫様さがし手伝うの止めよっかなぁ。」
「いやいや、拙者はただ、この牛車の造りを言ったまでで…」
で、俺がそう言うと、一之助は姫様さがしを止められては困ると、慌ててそう言いなおした。ホントっ、かわいい奴。俺はそんな簡単に姫様さがしを止めたりしねぇよ。止めてまた、切腹騒ぎなんて起こされたくはないからな。

一之助はそれこそ3歳のガキみたいに窓の外の風景を眺めている。
やがて、目的のスーパーに着いた。一之助は地上3階建てのその建物に目を瞠った。
「この城みたいな所が、市だと申すか。」
城?ま、一之助の時代の高層建築と言えば、城ぐらいしかないのか…俺はそんな事を考えながら頷いた。
「とにかく行こうぜ。」
そしてスーパーの中に入ると、まっすぐ階段を目指した。エスカレーターもエレベータもあるにはあるが、紳士用品売り場は2階だし、動く部屋だの動く階段だのとまた一之助に騒がれかねない。
階段スペースのすぐ横には金券ショップがあった。新幹線のチケットや、色々な商品券の隣には、古銭の商品ディスプレーがあった。
「そうだ、買い物をするにはこの時代の金子でなければならんのだろう。姫様をお守りするためにと殿が下されたものだが、圭治に金の難儀をさせるのも心苦しい。全部でなければ両替も差し支えなかろう。」
そう言うと、一之助は俺が出がけに貸したバッグの中から財布の様なものを取り出し、なんとピカピカの小判を取り出し、店のカウンターに差し出した。
「済まぬがこれを両替してもらえんだろうか。」
その小判に俺もビックリしたが、もっとビックリしたのは、その店のオヤジさんだった。
「そ、それは銀判!!君、これを何処で?!」
銀判?小判じゃねぇの??銀で出来てるから、銀判?
「殿が下された大切なものじゃ。」
オヤジさんの言葉に、一之助は胸を張ってそう言った。一之助は殿様の話をするときはホントいつも偉そうにするよなぁ。でも、そんな胡散臭い説明なのに、オヤジさんは妙に興奮していた。
「す、すごい!今までにも古い銀判はいくつか見てきたが、こんなに状態の良いものは初めて見た。これは室町時代後期のものだよな。それで未使用なものが存在してたなんて!!」
オヤジさんは急遽手袋を填めると銀判を持ってプルプル震えながら見入っている。でも、俺はそれで、一之助が本当に戦国時代から来たんだと改めて実感して鳥肌が立った
「そ、そうだ…いくらで買おう?5万円?それじゃ安すぎるか…子供相手に足元を見ていると思って、譲ってはくれんかな。よーし、8万円出そう。それで、良いか。」
「元より譲るつもりじゃ、それで構わぬ。」
オヤジさんの言葉に一之助が即答して商談成立。オヤジさんはレジから一万円札を8枚出して一之助に渡した。俺は内心、こんなに簡単に金が手に入って良いのかって思わなくはなかったけど、とりあえずバイト代を減らさずに済んだのは正直ありがたかった。
一之助はオヤジさんに一礼すると俺の方に寄って来て、
「これが圭治たちの時代の金子か…よく見ると紙ではないか。紙などが銀の代わりになるのか、本当に。」
と心配そうに試す眇めつ眺めている。
「紙ってったって、そんじょそこらの紙じゃねぇから。洗濯機に入れたって破れねぇし…」
「何と、この紙の金子を洗うなどといううつけ者がおるのか?!」
俺はついうっかりと洗濯機と言ってしまったんだが、一之助は洗濯という理解可能なワードに食いついて、そう答えた。ま、着物にはポケットないからな。それに、いちいち手洗いだし。
「これだけあればこのような服は買えるのか?」
続いてそう言った一之助に、
「充分お釣りがくるぐらいだよ。」
と答えた。この金額ならブランド物のジャージにだって、お釣りがくるだろうよ。あ、何なら安いスーツでも買うか?背はちんまいけど、スタイルは悪くねぇから、結構様になりそうだ。

俺たちがそんな話をしていると、後ろで女の声がした。
「そこの不良少年たち、大金持って何にやにやしてんの?アブナイなぁ。」
振り向くとそこには…俺の幼馴染のメグ、伊倉愛海(いくらめぐみ)がいた。こいつ夏休みもあと3日だってのに、何でこんなとこに居るんだよ。
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