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再び桜花笑う季20

「良かった、無事で…君が脱線事故に遭ったと聞いて、居ても立ってもいられなくなって飛んできた。」
私がそう言うと、彼女の横にいた人の一人が私に、
「ご主人ですか?」
と聞いた。さくらは不測の出産劇の立役者として、インタビューを受けていたのだった。
「いいえ、お友達です。この方は事故で奥様を亡くされているので、心配して駆けつけてくれたんです。」
それに対して、彼女はそう答えた。続いて彼女は
「もうこの辺でよろしいですか?」
と聞き、取材側が了承するのを確認して、私に肩を貸して彼らから離れた所の椅子に私を座らせた。
「それで、怪我は?」
そう言った私に、彼女は笑顔で頭を振った。
「怪我なんかしてないわ。私の乗ってたのは脱線した車両じゃないもの。」
「じゃぁ、何で君は病院に…」
「それは、車内の妊婦さんに付き添って…そう言えば松野さん、どうして私がここに居るのが分ったの?」
「妊婦さんの付き添い?!ああ、なんか電車の中で赤ちゃんが生まれたって聞いたけど、その看護師って、君?!俺は、曽我部さんに電話をもらって…」
私は、ようやく事情が解かって、ホッとして、一気に疲れを感じた。一方、私が由美から電話で事故を知らされたと聞くと、彼女は急にぷりぷりと怒りだし、すぐさま由美に電話を始めた。
「あ、そがっち?!ちょっといい加減にしなさいよ。松野さん今、血相変えて病院に来たじゃないのよ!!良かったって…良くないわよ!松野さん、私の顔を見て震えてたんだからね!!」
「良いよ、さくらちゃん。」
私は、彼女の携帯を持つ手にそっと触れ、私を見た彼女にゆっくりと頭を振ってみせた。
「良くないわよ。」
彼女はそれに対して一瞬びくっと身体を震わせた後、口をとがらせて返した。
「俺が悪いんだ。君が事故に遭ったと聞いた途端、俺、後のことを何も聞かないで、電話切ったんだから。」
「翔子さんや穂波ちゃんの事を思い出したら誰だってそうなると思うわ。ねぇ、そがっちあんたも看護師なんだから、その辺のことくらい解かるでしょ?!」
そうだ、由美はそれが解かっていて、わざと全部を私には告げなかったのだ。縦しんばさくらが事故車両にいて、何らかの怪我を負っていたとしても、ただの知人であればここまでのリアクションは起こさない。私にとって、さくらが翔子と同じ位置づけを持つ存在だからこそ、ここまで取り乱したのだ。私は彼女から携帯を取り上げると、
「曽我部さんありがとう、おかげで解かったよ。」
と由美に告げた。
「ようやく解かったの?どういたしまして。お礼なんて要らないわよ。」
由美はたぶんにやにや笑っているのだろうなぁと思われるような口調でそう返した。
「松野さん、そがっちにお礼なんて良いわよ!つけあがるから!!」
さくらは私の台詞の本当の意味は解からないだろうから、そう言って私からまた携帯を取り上げると、ひとしきり由美に文句を言い続けたのだった。

穂波、ゴメン…パパは、やっぱりこのお姉さんが好きなんだ-
さくらが由美にぶつける文句を聞きながら思っていたのは、そんな娘に対する詫びの言葉だった。
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