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再び桜花笑う季19

事故と聞いただけで私は完全に舞い上がってしまっていた。一種のフラッシュバックとも言えるのかもしれない。私は由美に何の事情も聞かず慌てて携帯を切り、通院時代いつもお願いしていたタクシーを呼びだすと、自宅マンションを飛び出し、玄関先で待った。このときには私はもう車椅子ではなく、杖をつけば歩くこともできるようになっていて、障害者スペースに駐車する必要はなかったが、どう考えても冷静に運転できるとは思えなかったのだ。
やがてマンションの入り口に着いたタクシーに乗り込んだ私は、
「急いで市民病院に行ってください。」
と運転手に叫んだ。
「もしかして、さっきの脱線事故の?」
「ええ…市民病院に担ぎ込まれたと、彼女の友人から連絡があったんです。」
私は、自分でさくらを彼女と呼んで、いたことにも気付いていなかった。
「大したことがなければいいですね。」
私を落ち着かせるようにとの配慮か、運転手はわざとゆっくりとした口調でそう言った。
タクシーの中のラジオではその脱線事故の続報が流れていた。真昼間の事故だったために、乗客は少なく、重傷者はあるものの、奇跡的に死者はなかったが、一時的に乗客が閉じ込められた状態となり、その中で産気づいた女性が車内で出産したという。
「乗客にたまたま看護師の人がいてね、その人が取り上げたらしいですよ。何にしても、無事に生まれてきて良かった。」
そんな風に運転手は話しかけ続けていてくれたのだが、私にはそれに応える心の余裕などなかった。病院に運ばれた=重傷者の図式が私にはできあがっていて、心の中はそのことでいっぱいだったのだ。

やがて、車は市民病院に着いた。私は転がるようにタクシーを降りると、受付を目指して走り出した。とは言え、私の足は杖がないとおぼつかない状態、心ばかりが空回りし、転びそうに何度もなりながら、私は受付を目指した。
頼む、無事でいてくれ…私はもう、置いていかれるのは嫌だ。頼む、逝かないでくれ!そう何度も念じながら、私は息を切らせて受付に立った。
「はぁ…はぁ、すいません三輪さくら、三輪さくらさんという人がここに来ていると聞いたんですが!三輪さくら…」
ところが、大声でそう言った私のすぐ後ろの待合の椅子の方から、
「はい?」
という疑問形の返事が聞こえた。振り向くと、数人の人に囲まれた小柄で色白の女性-三輪さくらその人が-驚いた様子で立っていた。何のことはない、車内で出産した子供を取り上げた看護師というのが、さくら本人だったのである。その妊婦さんは脱線した両にはいなかったが、脱線の急ブレーキの衝撃で産気づいたのだと言う。同じ車両にいたさくらはもちろんどこにもけがはなかった。
「松野さん…」
「さくらちゃん!」
私は、さくらに駆け寄った。というより、彼女のそばにいこうとしたが、足がもつれて彼女に不様に倒れ込んだという方が正しいだろう。
「どうしたんですか?」
さくらは、彼女の肩を抱いたまま、震えている私を不思議そうに見上げた。
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