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再び桜花笑う季14

音楽面を彼女に聞きながら、何とか私は曲を入力した。
私は本来はピアノ曲であるその曲を、主旋律にバイオリンを加えてバイオリンコンチェルトのようにして、彼女のSDに転送した。パソコンではそういったことが簡単にできる。
「なんだが、前のより高広が一緒にいてくれるみたい…」
出来上がった着メロを聞いたとき、彼女はそう言って涙を流した。本来は存在しない弦を主旋律に据えたことに、耳の良い彼女は違和感を感じるかと思ったが、結果喜んでくれたのを見て私はホッとした。
「何かちゃんとお礼しなくっちゃ。話を聞いてもらってるだけでもありがたいのに。」
「そんなことないよ、俺だってさくらちゃんにどれだけ世話になってるか。ちょうどお礼ができてよかった。」
恐縮する彼女に、私はそう言って笑った。その頃には私は、彼女のことを三輪さんからさくらちゃんと呼ぶようになっていた。

そして、その時にはそれ以上何もなかったのだが、このことはやがて後に違った形で波及する。
彼女の大親友、野江恵実が結婚することになり、彼女が結婚の祝いの品の希望を聞いた時、恵実は一旦は何もないと言ったのだが、それでも彼女が重ねて聞くと、
「お店のホームページ」
と答えたという。恵実の夫になる佐藤隆一は老舗和菓子屋の4代目で、ホームページを立ち上げてネットでの販売を考えているらしい。だが、肝心のページを作る暇がないという。その顛末と、彼女のため息交じりの一言、
「私がお祝いに作ってあげられれば良いけど、この間の携帯だって、松野さんがいないと全然解かんなかったしなぁ。」
というのを聞き、
「良かったら俺、やってみようか。」
安請け合いしたのがことの発端だった。
「松野さん、お願いできますか!」
彼女は私の言葉を聞いて小躍りした。彼女はどうやらあの一件で、何やら私をパソコンのエキスパートだと誤解してしまっているようだった。確かに女性の彼女よりはコンピュータ用語にも明るいが、エキスパートと呼ばれるような技量はない。
それでも私は、彼女にそんな誤解をされているのを嬉しく思っていた。もう何もかも無くしたと思った私が誰かの役に確実に立っている。それを思い出させてくれた彼女に何かお礼をしたい。そんな気持ちからだった。

それで、悪戦苦闘しながらのホームページ作りが始まった。当の隆一に恵実も交えて何度もどういうものに仕上げようかと話し合い、良い物を目指した。その時には私のわずかながらの営業でのノウハウも役に立った。

出来上がったホームページを隆一はもちろん、隆一の両親も気に入ってくれた。そして、その両親の知人からの依頼まで彼らは持ってきてくれたのだった。両親たちの世代はパソコンには疎く、ホームページ立ち上げを考えたとしても、頼むにもどこに頼んで良いのかすら解からないというパターンで二の足を踏んでいることが多いのだと言う。
「今度はタダ働きはダメよ。あんたどうせさくらから金なんかとれないんでしょ。」
その時、恵実はそう言って笑った。

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