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再び桜花笑う季11

「ホントにすみません。」
私は車に乗り込んでから、三輪さくらに都合何度目かの詫びのことばを言った。
「本当に、もういいですよ。私こそ、失礼なこと言っちゃいました。松野さんはいきなりご家族を亡くされたんですもんね。それに比べたら、覚悟をする時間があった私は幸せだと思わなきゃ。」
すると、彼女はこう答えた。
「あなたは前向きなんですね。私とは大違いだ。」
「いいえ、私は今も高広と一緒に居たい、ただそれだけですよ。」
そして、彼女はそう言った後、小さくため息をついてこう切り出した。
「ねぇ、松野さん…変なお願いをしていいですか?」
「何です?」
「あなたに高広の話をさせてくれませんか。」
彼女は彼のことを全く知らない私に、何故彼の話をしたいと思うのだろう。不思議なことを言うなと私は思った。
「彼の話ですか。それはどうして?」
「他の人には聞かせられないから…私が高広の話をすると、母も友人もすごく心配するんです。特に母は私がいつか彼を追いかけるのではないかって今でも思ってます。だから。」
私はその言葉を聞いて内心ギクッとした。私の場合は、本当に妻や子供の許に行こうとしているのを悟られまいとして、逆に平静を装ってしまうのだが。彼女は彼から『生きろ』と遺言されたことを守ろうとしている-そう私に言ったばかりだった。
「みんな判で押したように忘れなさいとか、違うことを考えたらとか言うんですよね。でも、私は忘れたくないし、新しいことをしようとも思わない。あなたなら、その気持を解かってくれるような気がして…ねぇ、そうだ、松野さんも奥さんやおじょうさんのお話を私に聞かせてもらえません?私に思い出のおすそ分けしてもらえませんか。」
確かに、そうだ。私が未だに妻や子供の話をすることに、周りは過剰反応する。先に逝った者は、遺された者の思い出の中でしか生きられないと言うのに。私は彼女の言葉にこくりと頷いて言った。
「じゃぁ、そうですね。三輪さんと…その…」
「高広、坪内高広です。」
「その坪内高広さんとの出会いから聞かせてもらえますか。」
「はい!」
彼女は本当に嬉しそうに笑顔で返事をした。そして、私に彼女が愛した男-坪内高広の話を始めた。
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theme : オリジナル小説
genre : 小説・文学

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