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再び桜花笑う季9

「あなたに何が解かるんです!!」
そう叫んだ三輪さくらの目は涙に濡れていた。
「私だって一緒に逝きたかった。高広が死んだ後、私自身も危なかったんだよって、助かって良かったねって、いろんな人に言われる度、助けてなんか要らなかったのにって思った。」
それを聞いて私はやはりと思った。
「解かるさ、俺だって一緒だ。何で助けたって怒鳴りたいくらいだから。だから、君の今のチャラチャラした態度が気に食わない。俺は一年余り経った今でも、翔子や穂波の所に行こうと思っているのに、君は平気で次の相手との子供のことを考えられる。しかも、彼が死んでから半年も経っていないじゃないか。」
「平気だなんて…平気な訳ないじゃない!」
私の言葉に彼女はそう叫んだ。
「俺にはそうしか見えないんだが。」
「だって、高広は『人の傷は癒えるから、心の傷だって絶対に癒えるから。』って…オレの分まで生きろって…その言葉がなかったら、私だって…」
そう言うと彼女は私に背を向けて泣いた。そして再び真っ赤な目を私に向けて睨むと、
「松野さんは奥さんやお子さんのところに行きたいんでしょ。じゃぁ、高広と代わって!高広はもっと生きたかったのよ。もう一度生きられるなら、彼はきっと一生歩けなくなったって、ううん、寝たきりだって喜んで生きてくわ。そんなこと言うんだったら、今すぐ高広と代わってよ!!」
そう言い放って、正面玄関まで一気に走って行った。
「三輪さん、待ってくれ!!」
しまった、彼女を本当に傷つけてしまった。彼女は私のようにある日突然翔子や穂波を失ったのとは違うのだ。それこそ、カウントダウンをするがごとくに刻一刻と迫る愛する者の最期と戦かってきた。それはそれでものすごい悲しみであったはずなのに…私は何でこんな不用意な事を言ってしまったんだろう。私は彼女を追って力いっぱい車椅子を動かした。

私は彼女を追いかけるのに夢中になって、正面玄関の自動ドアを越えると、少しの踊り場の後に階段になっていることをすっかり失念していた。そのことを思い出した時には既に私の体は自動ドアを越えていて、勢いをつけて漕いでいた車椅子は急には止まれず、私の体は階段から宙へと放り出された。
「松野さん!」
ガシャンという音に振り向いた彼女は、慌てて私の許に駆け寄ってきた。
「済まない…あんなひどいことを言ってしまうなんてどうかしてた。」
謝る私に、彼女は黙って頭を振ると、車椅子を立て直し、そこに私を乗せた。

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