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旅立ちの季(とき)第二部 marine side 13

旅立ちの季(とき)


私がカナダに戻る日が来た。空港には明日香と子供たちはもちろん、忙しい仕事の合間を縫って、秀一郎までが来てくれた。
「お姉ちゃん、それじゃぁ…元気で。」
秀一郎から差し出された手を私も握り返す。
「あんたたちも元気でね。そうだ、こっちにも遊びに来てよ、待ってる。」
私も穏やかな気持ちでそう返すことができるようになっていた。
「そうよね、何なら龍也、あなたあっちに留学する?あなたフランス語学科に行きたいって言ってたじゃない。」
すると明日香が龍也にそう言った。
「何で?」
龍也が不思議そうに尋ね返す。
「知らないの?伯母さまの住んでる所って、フランス語で会話する人も多いのよ。」
「へぇ、北アメリカだから、当然英語だけだと思ってたよ。」
龍也はその言葉に目を輝かせた。
「両方通じるから私、あそこに行ったのよ、あの時。」
私は龍也もまたフランス語に興味を持っていてくれていることが、見えない親子の絆を感じたような気がして嬉しかった。

「いい気なもんよね。」
その時、穂香がそう言った。
「そんな理由で、カナダに行ったの。未来伯母さま、私はあなたが嫌いよ。」
「穂香!あなた伯母さまに向かって何て事言うの?!あの話、解ってなかった訳?!」
驚いて叫んだ明日香の方を一瞥した穂香はふてくされた様子で彼女から目を反らして言った。
「勝手に産んで勝手に消えた。そして、14年も経って戻ってきたら嬉しそうに今の子供たちの話をする…そんな女の事をどうして好きになれっていうのよ!私も龍もずっと待ってたんだから。2人で『明日はママお仕事から帰って来るよね。』って毎日、毎日…」
「穂香、ゴメン…」
私が子供たちのためだと思って姿を消したことは間違っていたのだろうか。
「だから、一言言っといてあげるわ。伯母さま、産んでくれて…ありがと…。」
-どんな罵りの言葉も受けなければならない-そう思ってぐっと唇をかみしめた私の耳に意外な言葉が響いた。
「伯母さまが生きていて、帰国するって聞いた時、私今みたいにお母様に言ったら、うんと叱られたわ。『伯母さまはあなたたちを捨てたんじゃないの、あなたたちを私たちの本当の子供にするためには、伯母さまは側にいてはいけなかったのよ。』って言って、お父様とお母様の実子になっている戸籍を見せてくれた…
でもね、それでも私はあなたが私たちを捨てて行ったことは許せない。でもね、産んでくれたことには感謝するわ。生きてるから、そう言えるんだもの。」
「何だよそれ、屈折してやんの。俺はそんなメンドーなことは考えないぞ。」
「何よ、龍の能天気。」
「能天気で結構、人生楽しけりゃいいじゃん。」
二人はそう言いながらお互いを小突きあって笑っていた。
「ありがとね…穂香…ありがとね…みんな…」
涙が止まらなかった。私はこんな小憎らしいことを言う穂香に、そしてそんな言葉を生みだすことができる子に育ててくれた秀一郎と明日香に感謝した。
「じゃぁ私、帰ります!」
涙を振り切るように、私は小学校の子供が下校する時みたく右手を空に高く掲げてそう言った。

そして、私を待つ新しい『家族』の許へと向かって、三度機上の人となった。

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