スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

克也-marine side 23

克也


秀一郎が龍太郎さんの亡霊に操られてるというのなら、私はママの生霊に操られているのかも。

ママはもう現実を生きてはいない。ちゃんと仕事もしているし、ご飯も作るし、パパや私たちとも会話はしてるけど、私はそう思う。

その実、志穂さんやヤナのおじさんと龍太郎さんの思い出話をしているママが一番生き生きとしているのだ。
秀一郎には気にするなと言ったけど、たぶん志穂さんもヤナのおじさんもきっと同じように現実を生きていないんだと思う。まるで、地球ゾンビ化計画…その毒気に晒されて、私たちもおかしくなっただけなのよ。そう、それが一番平和な考え方だと思わない?

小一時間、その雑居ビルで過ごして、ぶらぶらとその辺を見るでもなく見て…夕方、私はじぶんちの最寄り駅に着いた。

「未来!!」
駅の階段を下り切って、バスターミナルの方に向かっていた私の耳に、聞きなれた声が響いた。克也だ。私は聞こえなかったフリをして、そのままずんずん歩いて行く。ドタドタと慌ただしく階段を下りて来た彼が、駆け寄って私の腕を掴む。
「お前、いつ帰ってきた!俺、何度も連絡入れただろう、なんでシカトしてんだよ!!」
「昨日、帰って来ました。でも、主任がどうしてここに?」
私は抑揚なく事務的にそう返事した。
「今日はこの辺で仕事があった。で、直帰してお前の家に寄るつもりだった。」
家へ?私はさぁーっと血の気が引くのを感じた。今ここで克也がいきなり家に現れたら、そこにパパが帰ってきたらと思うと、想像するのも怖かった。
「な、何でウチになんか来なきゃならないんですか!」
「もう一度話し合おうと思って、俺ちょっと言い過ぎたよ。だけど、携帯もメールもいくら入れてもなしのつぶてだろ、お前。だから、思い切って来てみたんだ。」
「もう、話し合うことなんかないはずです。仕事も辞めましたし、つながりなんてないじゃないですか。」
お願い、今更もうかかわってこないで…私はそう思いながら彼に言った。
「辞表は俺のとこで止めてある。病気ってことにしてあるから。戻って来いよ、病欠も長引くと上が煩いからな。」
すると克也はそう言った。
そして…元通り広波克也の「愛人」を続けろということですか…でもね克也、私はもう戻れないんだよ。いろんな意味で。
「広波主任、辞表は遠慮なく上に提出してください。私ね、昨日まで名古屋にいたんです。で、今回はちょっと戻っただけなんで、またすぐ名古屋に帰ります。」
「なごや?!何だそれ。」
案の定首を傾げた克也に、私は続けてこう言った。
「あっちで知り合った人と…結婚するんです。」
「結婚?」
驚いた彼の私を掴む力が緩んだ。私は彼の腕を振り解くと、軽く会釈をして踵を返した。




スポンサーサイト

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

comment

Secret

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。