スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

marine side 17

「お姉ちゃん、いきなりどうしたの。」
秀一郎はドアを開けて私の顔を見ると、そう言った。秀一郎は、明日香に倣って私をお姉ちゃんと呼ぶ。
「引っ越しどう?ちょっとは…すごいな、随分片付いてるじゃない。」
私はついこの間引っ越したばかりなのに、随分と片付いている室内に目をやってそう言った。
「ああ…ヤナさんがね片付け魔なんだよ。あの人が来るたびに何も言わないでも部屋が片付いていくんだ。」
「何よ、他人事みたいに。それに、ヤナさんって呼んでいいの?お母様の旦那さんでしょ?」
「そうなんだよね。全然現実感ないんだけど。でも、呼び方のことは、今までどおりの方が良いってヤナさんが言ってさ。」
私の言葉に、秀一郎はため息交じりでそう答えた。
「ふつう、死んだ元の夫と暮らした家にそのまま住みたいなんて言う男がいる?」
ま、経済的にそうならざるを得ない人もいるけど、結城家の場合経済的な要因はない訳だし。でも、子供にとってそれは気持ちのいいものではないと思う。ましてやあんな亡くなり方をした前夫の思い出がいっぱい染み付いた家には間違っても入ろうとはしないだろう。妻をあの場所から引き離そう…普通の夫ならそう考えるはず。
「母様とヤナさんって、父様の思い出話に終始してるんだ。何だか2人でいたって3人で過ごしているみたいな…そんなで結婚なんて違和感だったんだけど、ま、ヤナさんは良い人だし、母様が良いならそれでいいんじゃないかと思ってたんだ。要するに結婚なんて2人の問題なんだし。でも…俺。怖いんだ。」
秀一郎は、私の前でだけ自分のことを意識的に俺と言う。
「怖いって何がよ。」
「ヤナさんの目、あの人の俺を見るときの目だよ。」
そう言った時、秀一郎は明らかに少し怯えていた。
「家にいたときさ、気がつくといつでも目が合うんだ。もしかしたら、俺がリビングにいる間はずっと俺のことを見てるんじゃないかと思うくらいにね。」
「バカね、考えすぎよ。確かに、秀一郎ってあの頃の龍太郎さんにそっくりだってママも言ってるわ。だから、ヤナさんも懐かしくなってつい見ちゃうのかもしれないわ。だけど、たぶんそれだけのことよ。」
「うん…」
軽い調子で言った私の言葉に、秀一郎は歯切れ悪く返した。
「それにさ、YUUKIでも一緒だったわけでしょ。きっといろいろな思い出がヤナさんの中にあるのよ。そんなに心配しない。」
私はそう言って、秀一郎の肩を叩いた
スポンサーサイト

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

comment

Secret

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。