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邂逅-切り取られた青空31

邂逅

私たちは修司の故郷に居を移した。
料理は得意だとは言え、素人だった修司がちゃんと一本立ちするにはそれなりに日数がかかる。私はパートに出て働き始めた。少しでも生活の足しになればというだけだったのだが、余計なことを考える暇がなくなって日々に追われる中、私は次第に仕事に癒されていった。結局、店が軌道に乗り始めるころには逆に辞めるのが辛くなるほどだった。

そして、引越しするのを嫌がっていた陸も、いざ引っ越してみると新しい友達もでき、新しいFCでレギュラー入りも果たせたため、今やすっかり方言まで使いこなすすっかり土地っ子という風にに生まれ変わってしまった。
瞳はと言うと、今度は板倉の両親になついて…要領が良いのは誰に似たのだろうと空恐ろしいくらいだ。

決して派手でも裕福でもないけれど、平穏な時間が流れていく。

そして気がつけば、あの日から3年半の月日が経っていた。

春の昼下がり、お昼のピークを過ぎたころだった。

「すいません、まだ大丈夫ですか。」
「いらっしゃいませ、まだまだ大丈夫…」
私がそう言って振り返ると-そこにはなんと亮平が立っていた。確かに距離では近づいてはいるものの、まさかそんな会うとは微塵も思ってもいなかったので驚いた。向こうもかなり困惑している様子で、固まったまま立ち尽くしている。
「ねぇ、遅かった?こら、晃ちゃん!」
そして奥さんらしき人物が入って来た。3歳くらいの男の子が亮平にまとわりつく。
「パパ、おなかちゅいた~。」
亮平は笑顔でその子を抱き上げた。パパ…亮平、もうそんな子どももいるんだ。
それから私は亮平の奥さんをみてまた驚いた。エルちゃんだった。
「エ、エルちゃん?!」
「えっ?え~っ?!かりんさん??」
エルちゃんはひどく驚いた様子で、私と亮平を交互に見た。
「かりんさんって横浜じゃなかったですか?」
「あの頃は。あの時、旦那が脱サラして店始めたいって言い出して…あの人、ここの出身なの。同じやるなら知り合いが多い方がいいしね。私がブログから急に抜けたのはそのせい。立ってないでどうぞ。」
私は座席を勧めながらエルちゃんに説明した。
「ありがとうございます…へぇ~、そうですか。」
「エルちゃんたちこそ、り…エイプリルさんと結婚したんだったら岐阜じゃなかったっけ?」
「昨日から名古屋に遊びに来てるんです。前島さんに名古屋に行くって言ったら、この店の話されて、あんまり美味しそうなんで、場所聞いちゃいました。」
前島さん…修司の親友で、今でも何かと連絡を取り合ってる人だ。
「何か嬉しいな、そう言うの。じゃぁ、自慢の味をご賞味いただきますか。で、何になさいます?」
私は亮平に背を向けて、エルちゃんにばかり話しかけた。

「いらっしゃいませ、加奈子、友達か?」
そこに修司が店に出てきてそう言った。友達の一言にちくんと胸が痛む。
「そ…ダイエットの時のブロ友。」
「ああ、その節は…家内が大変お世話になりました。」
「あ…いや、こちらこそ…」
亮平が返事に困っていた。修司は型どおりの挨拶をしただけなのだけれど。
「かりんさんとブログで知り合ってなかったら、私たち結婚してなかったですもん。こちらこそお世話になりました。」
エルちゃんは私のほうに最初にコメして来たんだっけ…よく覚えていない。

「ねえねえ、少し話できませんか、こんな偶然ないですし。」
彼らが食べ終わった後、エルちゃんにそう言われて答えそびれている私に、
「夕の分までに帰ってくればいいよ。、喫茶店にでも行って来いよ。積もる話もあるんだろ。夕の仕込みは俺がやっとくから。」
と、修司が言ってくれた。そう言われるともう行かざるを得なかった。
「うん…」
「じゃぁ、女同士で話してくる?僕は晃平連れて別のとこにでも行こうかな。」
「ダメ、亮ちゃんもブログ張ってたんだし、一緒じゃなきゃ。」
エルちゃんはいたずらっぽく笑ってそう言った。
「ね~、晃ちゃんもママと一緒がいいよね~。」
「うん。」
エルちゃんがそう言うと晃平くんがかわいい声でそう答える。
私には、見ないようにしている亮平の当惑した表情が見えるような気がした。



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