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僕の…子供

僕の…子供


僕は救急車を呼んで、海を病院に運んだ。

「先生、海は…彼女は大丈夫なんですか?」
「症状から考えるとどうも、パニック状態からくる過呼吸だろう。大丈夫、すぐ落ち着くから。」
医師はおろおろとそう訪ねる僕に向かって優しくそう答えた。しかし、
「子供は?子供は大丈夫なんでしょうか?」
と続けて僕が尋ねると、
「えっ?彼女妊娠してるの?分かった。」
そう言ってまた彼女を診た。
「赤ちゃんの方も大丈夫みたいだね。」
「良かった…」
僕はそれを聞いて心底ホッとしてその場に座り込みそうになった。
「お父さんまで倒れたらどうするの、赤ちゃんが戸惑うよ。」
その様子を見ていた医師は、笑いながらそう言って僕の肩を叩いた。
そうだ…僕はこれからこの子の“父親”に…ならなきゃならないんだ。

海は念のために一晩だけ入院する事になり、病室に移された。
目覚めた海に僕は、
「心配しないで、赤ちゃんは大丈夫だよ。」
とだけ告げた。

やがて、病室に海の両親が到着した。
「ご無沙汰してます。」
僕は、そう言って彼らに深々と頭を下げた。
「結城君?あなた、夏海とは別れたんじゃなかったの?」
彼女のお母さんはそう言って僕を睨んだ。だからと言って、今の僕はそんなことで怯むわけにはいかなかった。海を、子供を守らなければ…そう思った。
「すいません、全部僕の責任です。」
「龍太郎?!」
海が僕の発言に驚いて声を上げた。
「良い?僕が、全部悪いんだ。普通の状態じゃない海を怒らせてすごく不安にさせたこの僕がね。
でも、もう解ったから。後は全部僕に任せて、海は僕についてきてくれるだけで良いから。」
僕は面と向かって本当のことが言えない状況の中で、海が健史の名前を出さないように釘を刺すつもりでそう語りかけた。
僕の憶測が正しければ、健史はもう2度と僕らの前には姿を現さない。
もちろん、それを僕もすんなりとは認められないし、認めたくもなかった。
でも、たとえ僕には理解できなくても、それが彼のたっての希望であるなら、彼が望むように僕らは2人で…いや、3人で幸せになろうよ。僕は目で海にそう訴えかけた。
海は僕のそんな態度に明らかに戸惑いながらも、“健史”の名前を呑み込んだ。

良い、それで良いんだ。2人で生まれてくる子供を、健史の子供を守ろうよ、僕はまたそう眼で彼女に合図を送った。

「それから、こんな場所で申し訳ないんですが、海と…いえ、夏海さんと結婚させてください。」
そして僕は…再び頭を下げて、彼女の両親に彼女との結婚を乞うた。
「彼女のお腹には…僕の子供がいるんです。」
僕は、彼らの眼を見てはっきりとそう告げた。

「子供だと?!貴様、何て事をしてくれた!!」
僕が海を妊娠させたと聞いて、海のお父さんは逆上して、僕を殴りつけた。
「龍太郎!ねぇ、お父さん止めて!龍太郎は何も悪くないわ!!」
「ううん、僕が悪いんだよ。海は何も言わなくて良い。」
僕はすばやく体勢を立て直し、慌てて起き上がって殴られた僕を助けようとした海を制して、またベッドに寝かせた。
「また、具合が悪くなったらどうするの?僕はもうあんな海の姿は見たくないからね。」
そう言った僕を海は縋り付くような眼で見つめ返した。
「でも、あなたとはずいぶん前に別れてるんじゃないの?今は梁原君って子と付き合っているんだと思ってたけど、そうじゃないのかしら?」
訝るような調子の海のお母さんの言葉が胸を貫いた。彼女の母親はこの事を感づいている?!でも、もう後には退けない。さぁ、僕はここからどう言い繕えばいいだろうか…
僕は頭を振り絞りながら、続く言葉を探した。
「ええ、僕が結婚に対して煮え切らない態度ばかり取ってきたもんだから、ちょっと前、そのことで彼女と大ゲンカして…しばらく連絡を取ってませんでした。
で、健史が…梁原のことですが、海は僕とのことを健史に相談していたらしいんです。でも、僕はそれを彼女がもう僕を見限って彼のところに行ってしまったんだと勘違いしてしまいまして、余計依怙地になってしまっていました。
今日も、彼女から子供ができたらしいと聞いたとき、『それ健史の子供なんじゃない?』なんてひどいことも言ってしまいました。彼女が倒れてしまったのはそのせいなんです」
僕はそう言ったところで1度頭を下げた。
「でも、海が倒れてみてようやく分かりました。僕は彼女を本気で愛してるんだって。彼女なしの人生はあり得ないって。そんな事はないけど、縦しんばお腹の子が僕の子供じゃなくってもそんな事は問題じゃない、僕は海じゃなきゃダメなんだって。
だから、お腹立ちはごもっともだと思います。でも、お願いです、僕と…僕とお嬢さんを結婚させてください。そして、僕にこの子を…僕に子供の父親をさせてください。」
僕は言いながら何度も何度も頭を下げた。
「ま、責任を取ると言うのなら…できてしまったものを今更無碍にはできんからな。」
ようやく、海のお父さんがそう言ってくれた。
「夏海ちゃん、あなたはそれで良いの。」
海のお母さんがそう聞くと、海はこくりと頷いた。
「なら、私に異論はないわ。お父さんも反対してないんだし。」
そして、一番反対するだろうと思っていた海のお母さんがあっさりと承諾してくれたので、僕は内心力が抜けるのを感じた。

「では、僕はこれで失礼します。うちで話して、改めて正式にお伺いいたします。」
僕はそうして-都合何度目になるのだろうか-深く頭を下げると、病室を後にした。
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