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最高のプレゼント

最高のプレゼント


龍太郎へ

夏海が来たんで、さぞびっくりした事だろう。
すまない…でも、今だけは彼女の事を俺にもそう呼ばせてくれ。

そう、彼女こそがお前に用意した俺からの最高のプレゼントだ。

これは、寄る辺のない俺を家族のように愛してくれたお前たちへの俺からの感謝のしるし。

これで、夏海は堂々とお前のところにいけるだろう。もう、何も障害はない。
俺から言わせれば、最初から障害なんてなかったと思うけどね。
それに付け込んで俺は最後に甘い夢まで見させてもらえた。感謝してるよ。

それから、しつこいようだけど、これは返却は認めない。というか、もう返却しようがないはずだから。

そんな訳で、俺の事は探さず、忘れてくれ。頭の隅からも完全にな。
そして2人、末永く幸せに…な。

my precious 僕の大切な2人に愛をこめて

                                           梁原 健史



これで障害がなくなる?!…一体、どういう事なんだ。障害がなくなる…まさか?!僕が読み終わってあるひとつのことを考えて呆然としていると、海の口から嗚咽とともにつぶやきがもれた。
「健史…どうして?!どうして…私1人でなんか…私、どうしたら…」
「ねぇ、海のほうはどう書いてあるの?僕のには君を頼むって書いてあるんだけど…」
そして、先程から僕の頭を占拠してしまったある恐ろしい憶測をかろうじて心に留めながら、僕は彼女にそう尋ねた。
「何って…」
海は涙でぐしゃぐしゃになりながら何か言ったが、解らなかった。だから、僕は彼女が持っていた彼女宛の手紙を彼女の手から抜き取った。弾かれたように僕を見た彼女に、僕は頷きながら手紙を開いた。

夏海へ

どんなに謝っても済む問題じゃないことは解っている。でも、俺ではお前をどうしても幸せにはしてやれない。
…なにより、もう限界だ。お前もうすうす感づいているだろう。
だから、勝手なようだが、俺は龍太郎にお前を任せてお前の前から永久に姿を消す。

龍太郎ならお前を絶対に幸せにしてくれるはずだ。あいつはお前と別れたことをずっと後悔している。
だから今、どうかそのままあいつの胸に飛び込んでくれ。
大丈夫、あいつは今のお前を喜んでそのまま受け止めてくれるはずだから。

そして2人で幸せを掴んで欲しい。それが俺の望み-一番の幸せ、そして最後のお願いだ。

                                          梁原 健史


「ねぇ、龍太郎、最後…最後って何?健史は何をしようとしてるの?ねぇ、教えて!」
海の必死の質問に僕は頭を振った。
「僕にも分からない…ここに来れば全てが分るって彼は手紙に書いていたけど、僕にはまだまだ分からないことだらけだ。だけど、彼が本気でどこかに行こうとしていることだけは分る。僕は、今朝彼のデスクで僕宛の手紙と一緒にこんなものを見つけた。」
僕はそう言うと、ポケットから健史の辞表を出して、海に見せた。辞表という文字を見た途端、海はわなわなと震えだし、
「ウソよ!そんなの…ウソよ!!ほんの昨日の事なのに…あんなに、あんなに喜んで…今日はうちに来る相談をするはず…」
そこで海の言葉が急に途切れたので、僕は海を見て-咄嗟に崩れていく彼女をかろうじて抱き、支えた。海の顔色は見る見るうちになくなり、肩で息をし始めた。
「海、どうしたの?!大丈夫?しっかりして!!」
「助けて龍太郎…私…この子を…助けて…私達の赤ちゃん…」
海はあわてて抱えた僕の腕の中で、僕の想像していた怖ろしい憶測を裏付けた後、意識を失った。
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