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解放

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海はその週末も僕のマンションにいつも通りやって来た。

「やっぱり別れられない。」
と彼女は言った。
「僕は一生誰とも結婚する気はないから。」
僕がそう言うと、それでも構わないから一緒にいたいとまで彼女は言ってくれた。彼女の母親は、「結婚が女の幸せ」と繰り返し説くタイプだと聞いている。その中で、結婚を選択しない生き方をするのは、それだけでも、大変な事のはずだ。

だから…僕は別れを切り出した。彼女を僕から解放しなくっちゃと思った。
「君は僕との中途半端な暮らしを、後々絶対に後悔する。」
僕はそう言ったけど、全てを話したら…たぶん、海はどんな仕打ちにでも耐えて側にいてくれるだろう。しかも僕には一言の愚痴も言わずに笑顔で。そして、僕の一族だけでなく、彼女の母親にまで翻弄されボロボロになっていくに違いない。僕はそんな彼女を見続けている自信はない。

「もう遅いんだよ。」
って言ったら、
「何が遅いのか解らない。」
と、海は僕の背中を叩きながら泣いた。遅いのか早いのか…ホントは僕にも分からなかった。

そして、海が僕の部屋の彼女の荷物を整理し始めたとき、僕はパソコンで仕事をしているフリをした。でも、あの時打ち込んでいたのは、実は海への謝罪の言葉だった。
見られそうになったらすぐに消す準備をしながら、僕は延々とゴメンね、本当は愛していると入力し続けた。

やがて玄関から海がドアの外に出ても、彼女がそこから歩き出せないでいる事も分かっていた。飛び出して行って抱きしめてしまいたい衝動に何度も駆られながら、僕はパソコンの前で頭を抱えて蹲るように座っていた。
「これで良いんだ、これで海は幸せになれる。」
僕は自分自身に呪文をかけるように、何度もそうつぶやいた。
やっと歩き出した彼女の靴音が聞こえなくなっても…僕はずっとそうしていた。

僕の手元に残ってしまった、この安物の指輪を握り締めながら…
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genre : 小説・文学

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