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公私混同の朝-ハムケ7

公私混同の朝


月曜日の朝、仕事を始めてから少しして、大和くんが私の席に私を迎えに来た。
「樹里、行くぞ。」
いつもは年上で、仕事暦も上の私のことは絶対に「山口さん」としか呼ばない大和くんが、名前で…しかも上から目線で言ったもんだから、私の部署の人たちは驚いていた。特に、今年入社の千夏ちゃんなんかは、ギョッとした顔をして私と大和くんとを交互に見た。
「あ、高階部長…山口しばらく借ります。」
それから、大和くんはそう言ってウチの部署のボスに軽く会釈した。
「お、おう。貸すからすぐに返せよ。」
部長はニヤニヤ笑いながらそう答えた。

私は大和くんに差し出された手を取ると、大和くんに引かれたまま部長に黙って会釈してデスクを離れた。
「八木ぃ~おまえ大胆♪」
それを見て、大和くんより入社の1年早い小久保くんがそう言って茶々を入れた。千夏ちゃんが事情を知りたくて、隣の席の野村さんを突っついているのが見える。
「昼休みにしてよ…」
私が小声で言うと、
「社長がそれじゃ捕まんないんだって。」
と大和くんから返ってきた。そうか…私たちはともかく、社長が居なきゃどうしようもないもんね。でも、朝一なんて恥ずかしすぎるよ!私はそう思った。

そして2人で行ったのはもちろん社長室。
「すいません、八木です。社長、少々お時間よろしいでしょうか。」
「おう、なんだ?大和。」
「この間ご指摘のあった件で、折り入ってご相談が…」
大和くんはそれこそどこかのクライアントにでもアポ取りするかのような口調で、社長室(扉なんてなくて、すりガラスのパーテーションで仕切ってあるだけなんだけど)の前でそう言った。
「この前の件って…そうか、あの件ね。それでどうなった。」
社長にそう言われて、大和くんは頭を下げた後、私とつないでいる手を彼に見せた。
「で、話し合った結果こういう結論に達したんで…社長には是非とも保証人の欄にご署名いただきたいと思いまして。」
と、私とつないでいる手を一旦離して、つないでなかった方に持っていたクリアファイルから婚姻届を出して社長の机の前に広げた。
「ほう…やっと決心つけたか、お前ら。にしてもえらく時間がかかったな。」
その婚姻届を見て、社長は嬉しそうにそう言った。
「お互いの親にも挨拶とかあったもんですから。」
大和くんがそう返すと、社長は
「そりゃ、そうだな。」
そう言いながら、うんうん笑顔で頷いた。
本当は大和くんが病院に行って検査をしているタイムラグも含まれているからなんだけど、たとえそれは社長でも、ううん、社長だからこそ言えない。
「で、もう1人は姉貴か」
社長は保証人の欄に署名して押印しながらそう聞いた。
「はい。」「はい。」
私たちはハモって返事した。

-*-

それから、私たちは総務部長である社長の姉-通称「お姉さん」のところに行った。彼女は早くになくなってしまった母の代わりに独身で父である先代社長を支え、2人の弟と1人の妹を育て上げた。
お姉さんは、彼女の机の上に広げられた婚姻届を見ると、
「私なんかが保証したら、碌なことがないかもよ。」
と笑いながら書き込んだ。
それから、氏名変更の用紙を取り出して、
「どうせ、あのままあそこに住むんだろうからこっちで書いても良いようなもんだけど、一応公的書類になるから、自分で書いてちょうだい。」
と言って私にそれを手渡した。その後、
「すぐにコレ、提出するの?」
と婚姻届を摘み上げて聞いた。
「いえ、戸籍を郵送で取り寄せたから、まだ届いてないんです。届き次第、行って来ます。」
「そう…届いたら、私に言ってね。」
大和くんがそう言うと、お姉さんはいたずらっぽく笑ってそう返した。
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