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『朝』-Parallel 最終話

『朝』

『これが僕の本当の気持ち。でも、君が覚えているのは少し辛すぎるかな。だからこれは僕がみんなあっちに持って行くよ』
長い長い龍太郎の『告白』が終わった後、龍太郎はそう言って夢を見ている夏海の前からすっと姿を消した。

 その時、夏海の耳元でペールギュントの「朝」が流れた。家族の弁当を作るために五時半にセットしてある携帯のアラーム機能が作動したのだ。耳の良い夏海は、無粋な目覚し時計のベルの音が嫌いだ。その代わりに携帯を耳元にボリュームを落として置いているのだ。その方が横に寝ている雅彦を一緒に起こしてしまわない。
 
昨晩は龍太郎の夢を見ていたような気がする。しかし、夏海は内容をちっとも覚えてはいなかった。たった一つ覚えていたのは、龍太郎が亡くなった日に見た夢と同じ、
『海、僕は最初から君を、君だけを愛しているよ』
という言葉だけだった。

 さぁ、朝の用意をと思って台所に出た時の事だった。いつもは最後まで寝ているはずの明日香が、トイレから出てきて、夏海の顔を見た途端泣き顔になった。
「お母さん、血が出てるよ。私、病気になったのかな」
そうか、明日香も……私には母としての仕事もまだ残っている。夏海は明日香に微笑むと、
「明日香、それは病気じゃないのよ。大人の仲間入りなの。心配しないで、教えてあげるから。まずは、きれいにしようね」
そう言って、夏海は明日香を洗面所に向かわせ、下着を取りに行った。

 ねぇ、龍太郎、あの時あなた『待ってる』って言ってくれたんだよね。でもゴメンね、私もう少しだけ行けないわ。
 私にはこのパラレルワールドで、迷子になった私を助けてくれたマーさんや、子供たちへの恩返しがまだ残ってるの。それが終わったら迎えに来てくれる? 私も『待ってる』
 夏海は窓から見える東京に続く空に向かってそっと囁いた。
                               ―――Fin――
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