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解放-Parallel 62

解放

 海は、その週末も変わらず僕のマンションに来てくれた。そして、
「やっぱり別れられない」
と言った。
「僕は誰とも一生結婚するつもりはない」
僕がそう言ったら、
「それでも良いから一緒にいたい」
と、そう言った。
 だから、僕は別れを切り出した。彼女を僕から解放しなくちゃと思った。
「君は僕との中途半端な暮らしを、後々絶対後悔することになるから」
僕はそう言ったけれども、たぶん君は全てを話したらどんな仕打ちにでも耐えて僕の側にいることを選ぶだろう。しかも僕には一言の愚痴も言わず笑顔で。そしてぼろぼろにされていく、母様とは逆の理由で母様と同じ様に。僕はそれを見ているだけの勇気がなかっただけなんだ。

「もう遅いんだ」
って言ったら、
「何が遅いのか分らない」
と、海は僕の背中を叩きながら泣いた。本当は遅いのか早いのか……僕にも今でも分らない。
 あんな説明で納得できたとは思えないけど、海が重い腰を上げて自分の荷物を整理し始めた時、僕はパソコンで仕事をしているフリをした。でもあの時、僕が打ち込んでいたのは、実は彼女への謝罪の言葉だった。見られそうになったらすぐ消す準備をしながら僕は、ゴメンね、本当は愛してる。これは君のためだからと、自分に言い聞かせつつ何度も入力し続けた。
 やがて海がドアの外に出ても、そこから歩き出せなくてずっと佇んでいることも分っていた。僕は飛び出して行って抱きしめたい衝動に駆られながら、パソコンの前で頭を抱えて座っていた。
「これで良いんだ。これで海は幸せになれる」
僕は自分に呪文をかけるように、何度もそう呟いていた。
 やっと歩き出した彼女の靴音が聞こえなくなっても、僕はずっとそうしていた。

 僕の手元に残ってしまった、この安物の指輪を握りしめて……
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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