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告白-Parallel 58

 告白

 倉本夏海はよくしゃべるし、よく笑う女の子。

 音楽室での出来事から、彼女は教室でも僕に話しかけてくるようになった。大抵は彼女の好きな(主にクラシック)音楽の話だ。流行の音楽――特に若いアイドルと呼ばれる人々の曲――は、耳の良い彼女には外れているのが気になって聞けないらしい。彼女に言わせれば、あれは一種の『拷問』なのだそうだ。
 彼女の女友達に言わせると、そういう話題を間違ってでも振ってしまうと彼女は限りなく暴走するから気をつけなければならないのだそうだ。でも、僕にはそれが暴走しているとは思えなかった。僕だって、顔や胸の大きさだけで女性アイドルを追いかけている男子の会話についていけなかったし、彼女がそうやって熱く語るのを聞いているのは、嫌いではなかった。
 やがていつの間にか、僕たちは付き合っていることになっているみたいだった。みたいだなんて無責任な言い方だと思われるかもしれないけど、正式に付き合っていない僕たちはお互いの家の場所も、それどころか電話番号すら知らなかったから、学校で話す以外に接点は何もなかった。
 僕はなかなか彼女の真意を聞けないでいた。僕の方はと言うと、音楽室で彼女が不意に僕に手を重ねた時から、いや……音楽室の窓を開けてあの綿あめみたいな笑顔を僕にくれた時から彼女の事が好きだった。だけど、周りの公認視している雰囲気が、まるで僕らの周りの堀を外側から固められているような感じがして、これでもし振られるような事があったら立ち直れそうにないと思ったからだ。
 それでも、なけなしの勇気を振り絞って告白しようと思った僕は、そのことを一番仲が良い健史――梁原健史――に相談した。相談と言うよりも確認かもしれない。健史はおそらく彼女のことが好きだと思っていたから。親友として抜け駆けはしたくなかった。

「お、龍太郎やっと重い腰をあげたのか」
僕が告白するつもりだと言うと、健史は笑顔でそう返した。
「それで君は良いの?」
「何が」
「僕が告白して上手く言った時の事。勘違いじゃなきゃ、君も倉本の事……」
「好きだと言えばそうかもな」
僕が遠慮がちにそう尋ねると、健史はあっさりとそれを認めた。
「だけどさ、お前らに入り込む隙間なんてないじゃん。俺はさ、勝てない勝負はしない主義なんだよ。その証拠に倉本は俺といるより、お前といて笑ってる時の方が断然カワイイ。俺はそれを見てるのが幸せなんだよ。だから、俺の事なんかいちいち気にすんな」
そして、何か訳の分らないことを言って、僕を煙に巻こうとしていた。
「ねぇ、もし振られた時は君が慰めてくれる?」
僕としてはそれでも彼女に受け入れてもらえる自信が持てなくてそう言ったんだけど、そしたら健史はぶっと吹き出した後、僕の背中を咳き込むほど思い切り叩いた。
「頼むからその言い方は止めてくれ。お前のその顔で、その口調で言われると、マジでキモいぞ。俺は男に言い寄られる趣味はない」
と、首筋を掻いた。男に言い寄られるって……心外だと思った。僕はこれから玉砕覚悟で彼女に告白しようって言ってるのに。
 だけど、その後ニッと笑った健史は、
「大丈夫だ龍太郎、俺はたぶん間違ってもそんなアフターケアはしなくて良いはずだから、お前もうちょっと自分に自信を持て」
と言ってくれた。僕は本当に嬉しかった。

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