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Parallel 33

翌日夏海は病院で妊娠を確認した。
 雅彦からも帰宅してすぐに着信があった。どうも仕事の合間にこっそりと何度も自宅に電話を入れていたようだ。
「どうだった?」
待ちきれない様子で尋ねる雅彦に、
「ええ、やっぱり。ねぇねぇ私ね、心臓の音も聞いたのよ」
と、夏海は半ば興奮気味でそう報告した。
 前日の妊娠判定薬でも胸に迫るものはあったが、病院の検査は格段に違う。彼女は新しく芽生えた命を、エコーとスピーカーによって目からも耳からも確認したのだから。感動も一入だと言えた。
「エコー写真もらってきたの。家でそれを見てゆっくりパパになった気分を噛みしめて頂戴。それまではおあずけよ。今、まだ仕事中なんでしょ。」
「ああ、そうするよ。でも、やっぱり。そうか……そうか……」
電話口の雅彦も、昨日の憮然とした様子から一転、素直に喜びが受話器からこぼれる。
「なぁ、親には俺から電話して良い?」
「あ、オイシイとこだけ持って行くの? イヤだ。それぞれの親にそれぞれが電話するってことでどう?」
雅彦のにやけた顔が電話からでも判った夏海は、そう笑いながら返した。
「しょうがないな、ああ、了解」
「解かったらさっさと仕事しなさい、係長さん。課長に叱られても知らないわよ」
「解かった」
そう言って、頭を掻きながら雅彦は電話を切った。
 電話を切った後、雅彦はしみじみとその喜びを噛みしめ、夏海に結婚と同時に仕事を辞めてもらう選択をしたことを本当に良かったと思った。それは、彼女の心を縛り付ける目に見えぬ影から引き離す一心でのことだったが、身重となった彼女を仕事に送り出すなどということは、心配で自分には出来そうもない。
 それに彼女の迷いも吹っ切れているのがその声で判る。
 雅彦は夏海が自分と結婚しても尚、かつての想い人への想いを絶ち切れないでいることに気づいていた。だからこそ執拗にその身体を求め、自分という存在を彼女の中に刷り込もうとした。それがやっと報われたのだ。
「飯塚係長、今の奥さんからですか?」
「えっ、何で?」
気を取り直して仕事に戻ろうとした雅彦は、若い女子社員にそう聞かれた。
「係長のとこラブラブらしいですもんね。それに、顔かなり緩んでますよ。何か、良い事ありました?」
女子社員は覗きこむように彼にそう聞いた。
「子供が生まれるんだ……」
雅彦は女子社員から顔を背けながらぼそっとそう返した。
「へぇ、おめでとうございます! 係長パパになるんですね」
「あ、ありがとう。」
雅彦はそんなちょっとオーバーアクションな女子社員のリアクションにさらに顔を緩ませた後、気合いを入れ直すために自分で自分の顔を数回たたいて、持ち場に戻った。
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theme : オリジナル小説
genre : 小説・文学

comment

NoTitle

あ!この回、未分類になってますよ~。

まいどどーも

マカロンさんへ
ありがとうございます。よく、忘れるんですよ。
カテゴリー分けた時、迷子探ししましたから。
修正させていただきました。
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