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Parallel 32

「それ、本当なのか?」
おっかなびっくりでやっとそう聞く雅彦に、夏海は笑みを崩さないで肯いた。
「お医者様に行かないとはっきりしたことは判らないんだけどね。」
彼女はそう言いながら、先ほど帰りがけに購入した薬局の紙袋に入っていた中身――一本の棒状の物を取り出して彼に見せた。そこにははっきりと命の誕生の判定がなされていたのだった。
「ねっ、だから心配しないで。」
「本当に、そうなのか……」
しかし、そんな種明かしをしてもまだ、雅彦の顔は硬く、反応は鈍かった。夏海にはそれが雅彦は子どもの誕生を喜んではいないような気がして、むっとした。(あの時の龍太郎と同じだわ。じゃぁ、何で私と結婚なんかした訳?)
「何なの、嬉しくないの?」
「いや……そうじゃない……そうじゃないんだ」
夏海の語調が怒っていることに気付いた雅彦は、慌ててそう返した。
「じゃぁ、何?」
「あのな、その……嬉しすぎるんだ。嬉しすぎてどうリアクションしていいのか判らない」
さらに彼女に問い詰められた雅彦は、赤面しながらぼそっとそう答え、それを聞いた夏海は思わず吹き出してしまった。
「何よそれ……素直に喜べばいいじゃん!」
「それはそうなんだが……夏海と結婚できた上に、こんなにとんとん拍子に父親になれるなんてな、何だか実感が湧かないって言うか……こんなに幸せでホントに良いのかって言うか……」
雅彦はそう言って恥ずかしそうに頭を掻いた。
 そう言えば……雅彦さんって、お見合いで初めて会った時もそうだった。夏海は雅彦と初めて出会った時の事を思い出していた。あの時、リアクション薄く不機嫌な彼に、放っておいても断られるだろうと地をだした事。おそらく、ひどく緊張したり驚いたりするのに気持ちがついていかないのだろう。だったら、そのことをしっかり噛みしめられた後なら、あからさまに態度に出して喜ぶのかもしれない。二度目に会った時のあの、饒舌な雅彦のように。
 実は内心、夏海もこのことにはかなり驚いていたのだ。
あれほど結婚自体に揺れを感じていたはずなのに、妊娠を素直に受け止め喜んでいる自分に。そして、子どもの父親として雅彦を今までと違う目で見始めている自分に。
 まるでそれは魔法のようだった。
 元気に生まれてきてしっかりとパパとママとをつなぎとめてね。夏海はそっと自分のお腹を撫でて、芽生えたばかりの命にそう囁いた。
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