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疑念-Parallel 16

疑念

「もしもし、何かあった?」
武田は何故か切羽詰まった声で電話に出た。
「あ、私……」
「なんだ、夏海さん? 公衆電話なんで、誰だか判らなくて焦ったよ。で、何? 俺も電話しなきゃと思ってたんだけど」
彼は電話の主が夏海だと判ると、武田はホッとしたような様子でそう言った。
「ううん、ちょっと声が聞きたくなっただけ」
いきなり、見合いの話は切り出せなかった。
「そう……じゃぁ悪いんだけど、しばらく電話できそうになくて……そのことを今、電話しようと思ってた。今も長くは電話できないから」
「ゴメン、忙しかったんだ。気にしないで、声が聞きたかっただけなの。カードも一枚しか持ってないし、すぐに切れちゃうわ」
夏海は二枚目のカードを握りしめてそう答えた。
「じゃぁ、また」
「あ……」
しかし、切れると思った途端、彼女の口から声が出てしまった。
「やっぱり、何かあるんじゃない?」
「うん……私、見合いするかもしれない」
そして、彼に問われてやっと見合いの話を舌に乗せる事ができた。
「お母さんか、懲りないね。じゃぁ、しばらくしたらこっちから電話するから。それまで待ってて」
彼は明るくため息をつきながらそう返事して電話を切った。夏海が受話器を置くと、一枚目のカードが少し度数を残して夏海の手に戻った。
 電話を切った後、夏海は電話ボックスの中で身震いしていた。
『そのうちあっちに別の女を作ってそれで終わり』
先程来の母の言葉が彼女の脳裏を駆け巡る。もうすぐ就職して一年経つんだもの。いろいろやらなきゃならない仕事があるんだわ……そう考える心の隙間から、小夜子の顔が浮かんでくる。康文、あの子と別れる時もこんな風に少しずつ引き離していったのかしらと。
いや、私がお母さんに見合いをせっつかれていることは前から彼には言ってあるし、待っててくれと言ってくれた。大丈夫、待っていればいいのよ……
 夏海は勢い込んでかけてきた公衆電話までの道を、帰りはのろのろと戻った。
 そして翌朝、
「お母さん、お母さんの顔が立つって言うんだったら、会うだけならいいわよ。あくまで顔を立てるだけだから断るけど、それで良かったら先方に電話してくれていいわ」
夏海はそう言って、足早に会社に向かった。 
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